「トロッコ王国美深」で廃線跡を運転!本物の線路を走る40分の旅

「トロッコ王国美深」で廃線跡を運転!本物の線路を走る40分の旅

「ここ、本当に自分で運転していいの?」
目の前には、どこまでも真っすぐ続く線路。その上を、小さなトロッコ列車を自分で運転して走る――。そんなユニークな鉄道体験ができる場所が、道北・美深町にあります。それが「トロッコ王国美深」。

かつて美深町を走っていた旧国鉄・美幸(びこう)線の廃線跡を活用し、実際のレールの上をトロッコ列車で走ることができます。長期休暇を利用して、夫、私、小学3年生の息子の3人で乗車体験をしてきました。

鉄道好きの息子は大喜び。運転係を拝命した、まあまあのペーパードライバーの私はドキドキ。旧国鉄時代の面影を探しながら、風を全身で感じる40分間の「鉄道旅」に、いざ出発進行!

未完成のまま廃線に 全線開業は幻となった美幸線

トロッコ列車が走るのは、かつて美深町内を結んでいた旧国鉄・美幸線です。美幸線は1964(昭和39)年、美深駅から仁宇布(にうぷ)駅間の21.2kmが開業しました。


ただ、この路線には、ちょっと意外な歴史があります。もともとは、仁宇布駅から延伸し、北見枝幸駅までを結ぶ計画でした。開業後も工事は進められていましたが、1980(昭和55)年に日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法)が施行。輸送密度の低い赤字ローカル線は廃止されることになり、美幸線もその対象になりました。


そして、1985(昭和60)年9月16日。美幸線は、全線開業を果たすことなく、その歴史に幕を下ろします。運行期間は約20年。「美幸線」という名前にはなんとなく明るい響きがあるのに、その生涯は意外と短い。そんな美幸線の線路が、今も残っています。



待合室では当時の写真や新聞記事などが見られます

13年後に廃線跡が「王国」として復活!

廃線から13年後の1998(平成10)年、旧仁宇布駅の敷地内に「トロッコ王国美深」が誕生しました。廃線になった線路を撤去するのではなく、そこを整備してトロッコで走れる場所にしたのです。


春から秋にかけて営業しており、2026年度は10月18日まで開国しています。


手作りの案内板

出発の15分前、集合場所となっている案内所へ。スタッフさんから運転方法や注意事項の説明を受けていると、前の便で乗車してきた人たちが続々と帰ってきました。どの顔もニコニコです。

すると、年配の男性がこちらに向かって「今から出発かい?すっごく楽しいよ!」と声を掛けてくれました。知らない人に「楽しいよ!」なんて声を掛けてもらうことなんて、そうそうありません。これから始まる鉄道旅への期待が一気に高まります。

自分で運転!約10kmの廃線跡をトロッコで走る


運転する区間は往復約10km。所要時間は約40分。なかなかの距離ですが、トロッコ列車には小型エンジンが付いています。足こぎではないのでご安心を。(※ただし、乗車中はかなりの揺れが続くので、妊娠中の方はその旨を理解した上での乗車が推奨されています。)


こちらが、車体後部に取り付けられたエンジン。乗車直前にスタッフさんがエンジンを始動してくれます。運転には普通自動車免許が必要で、AT限定でもOK。

そして、いよいよ乗車。スタッフさんから操作方法を教えてもらい、サイドブレーキになっているレバーを外します。

本物のレールを走る感覚がたまらない!

アクセルを踏むと――。
ガタン!
トロッコがゆっくり動き始めました。「おおお・・・」。思わず、驚きの声が漏れます。


最初は恐る恐るアクセルを踏んでいましたが、操作は足元のブレーキとアクセルが中心なので、思っていたよりもすぐに慣れました。気づけば、運転しながら景色を楽しむ余裕も。


木々の間を、線路がどこまでも真っすぐに伸びています。車体は開放感たっぷり!風がびゅんびゅんと顔に当たります。普通の列車なら窓ガラスの向こうの風景が、ここでは全部むき出しです。暑さも何のその、走り出すと風が気持ちいい!何とも言えない爽快感!

そして、何より良かったのが、レールの継ぎ目を車輪が通過するときの独特の走行音。


「列車に乗っている」という感覚が、音からやってくる感じ。この音を聞いていると、昔、この線路を列車が走っていたことが急にリアルに感じられます。

かつてこの線路を列車が走り、地域の人たちが乗り降りしていた――。見たことはありませんが、そんな美幸線の風景が思い浮かんできました。


Googleマップよりキャプチャ

しばらく進むと、鉄橋がありました。ここはかつて美幸線で使われていた鉄橋です。橋の上から見る景色は開放的!ですが、欄干がないので結構スリルがあります。


さらに進むと、線路の左手が開けてきました。道道49号線(美深雄武線)と並走します。

トロッコ同士がつかず離れずで走るのもおもしろい

どんどん走っていくうち、前方に同じ便のトロッコ列車が見えてきました。(写真でははるか彼方ですが。)


同じ時間帯に複数のトロッコが走っています。前を走るトロッコとの距離が縮まったかと思えば、また少し離れていく。この「つかず離れず」の加減も、なかなかおもしろいものです。


Googleマップよりキャプチャ

折り返し地点に到着すると、すべてのトロッコが到着してからポイントの切り替え作業が行われます。普段の鉄道旅では意識することのない鉄道の仕組みを間近で見るチャンスタイム!

そして、Uターンして来た線路を再び走って戻ります。

美深の自然と美幸線の歴史を一度に楽しめる

気がつけば40分の旅は終了。思っていたより、ずっと早い感覚でした。


トロッコ王国美深の魅力は、単に「トロッコを運転できる」というだけではありません。実際に列車が走っていた本物のレールを自分で運転して進んでいく。その途中で、森の中を抜け、鉄橋を渡り、かつての美幸線に思いをはせる。鉄道好きはもちろん、乗り物好きにもおすすめです。

秋が深まるこれからの季節は、夏とはまた違った景色を楽しめそうです。「見る鉄」「乗り鉄」だけではなく、ここでしかできない「運転する鉄(?)」。美深の森の中を走る、約40分の非日常体験。昔の路線を、自分で走ってみませんか?


トロッコ王国美深

住所
中川郡美深町字仁宇布215番地
電話番号
01656-2-1065
備考
開国期間中は毎日運行(2026年は10月18日(日)まで)
入国時間 8:30~16:00(トロッコの初便は9:00発、その後は1時間毎に運行、最終便は16:00発)
入国料金(トロッコ体験料) 大人 1,800円(お一人様の場合 2,000円)/中高生 1,400円/小学生 800円/幼児 無料

この記事を書いたモウラー

モウラー

えぞかんぞう

岡山出身の旅好き人間です。コロナ渦を機に2021年、東京から札幌に家族(夫、息子)とともに移住。鉄道好き遺伝子を受け継いだ息子とともに、道内の鉄道スポットを巡っています。