
提供:公益財団法人 北海道科学技術総合振興センター
北海道産さつまいも情報交換会レポート
新たなスイーツづくりを目指して!「生産者」「加工業者」「洋菓子店」合同の情報交換会を開催
2025年1月23日(木)に「さつまいも北海道プロジェクト×スイーツ王国さっぽろ推進協議会 情報交換会」が札幌市内で行われました。このイベントは、北海道産さつまいもの普及を目指して「生産者」「加工業者」「洋菓子店」の各事業者が集まり、新たなスイーツづくりに向けた様々な情報交換を目的に企画されたもので、初めての開催となります。
その様子をご紹介します!
さつまいもは、道内でも新たな産品として近年では高い注目が集まっている一方で、消費者の認知はまだまだ進んでいないという側面があり、今後の様々な活用と消費の拡大が期待されています。イベントでは、北道産のさつまいもについての様々な情報共有や、事業者間の意見交換が実施されました。
イベントの企画を行ったのは公益財団法人 ノーステック財団。北海道のものづくりや商品開発などの支援等を行う組織で、道内の企業活動を影で支える縁の下の力持ち的存在です。同財団では「北海道産さつまいもを世界の人気者にする」をスローガンに、「さつまいも北海道プロジェクト」を推進してきました。
2024年からは道内の生産者と加工業者や小売店と連携し、消費拡大に向けたPR活動を本格化。今回、さっぽろスイーツ王国さっぽろ推進協議会との連携が実現したことで、さつまいものスイーツへの積極的な活用を目指します。
プログラムのはじめには、道産のさつまいもの現状についてノーステック財団から参加者に向けてのプレゼンテーションが実施されました。普段目にすることがない情報に触れられる貴重な機会ともあって、業種や立場が異なる参加者がそれぞれに真剣に耳を傾けていました。
道内のさつまいも生産量は年々増えているものの、北海道の気候や土壌に合った栽培技術についてはまだまだ生産者の間でも手探りの状態にあります。ただ、品質や収量の安定に向けてはまだまだ黎明期ではありますが、「さつまいもを地域の役に立てたい」と考え、積極的に取り組む生産者は多いと言います。さつまいもを今後の新たな産品として盛り上げるために、各事業者で抱えている課題や目標をまずは共有し、みんなで協力しながら盛り上げていこう!というプロジェクトの趣旨が伝えられ、さつまいもを取り巻く現状について共有が行われました。
また、ディスカッションの部では、各生産者から栽培しているさつまいもの品種や特徴についてのプレゼンテーションがありました。北海道では本州と同じ品種を用いても芋の味や品質に違いがあることや、栽培する土地によっても上手く育たないケースもあるなど、生産の難しさについても語られています。
さらに、生産についてはさつまいも用の農業機械の導入が遅れていることや、保管やキュアリング(糖化)を行う施設も少ないなど、必要な設備が整っていない課題も伺えました。大規模生産を行えない環境の中で、生産者それぞれが試行錯誤を重ねて効率的・安定的な生産に取り組んでいるというのが、道内の生産現場の現状になります。
一方で、さつまいもスイーツの開発についても、スイーツ王国さっぽろ推進協議会のメンバーである洋菓子店から積極的な意見や要望が挙がりました。さつまいもをお菓子づくりに活用したいというパティシエは多く、ペースト状に加工された材料があると使い勝手が良いといった声や、芋の旨味や色味が良いペーストができれば積極的に使用したいという要望も挙がっていました。
また、お店によって様々なニーズがあるため、希望に合ったさつまいもの原料加工について、将来的に幅広く対応ができると良いのではという指摘もあり、洋菓子業界でも注目度が高いことが伺えます。
それを受け、食品加工を行う企業からも、ペーストやパウダーに加工について各社の加工技術についてプレゼンテーションが行われました。さつまいもは時期や天候によって芋の品質(糖度や味など)が安定しないため、加工品にする場合に一定の品質を保つことが難しいといった課題や、芋の色味や風味を損なわない加工についても、まだまだ技術的な面や情報が不足しているそうです。これらの課題についてどの様な方向性で取り組むべきか、三者で意見が取り交わされました。
普段は聞くことが出来ない疑問や課題を共有できる機会ともあって、参加者同士での具体的な質問や意見交換が時間いっぱいまで行われ、盛況のうちに意見交換会はクローズとなりました。この様に、まだまだ課題はあるものの、各事業者が北海道産さつまいものポテンシャルについては高い期待を寄せていることが感じられました。
イベントの最後にはさつまいもやスイーツの試食を兼ねた交流会も実施。各生産者が持ち寄ったさつまいもや、各洋菓子店が作ったさつまいもスイーツが並べられ、事業者の枠を越えて道産さつまいもの可能性を共有する時間になりました。試食は好評で、芋の品種や調理による味わいの違いを体験できる他、パイや焼き菓子、ケーキといった様々なバリエーションの洋菓子やリキュールなども用意され、参加者はさつまいもを味わいながら交流を深めていました。
参加者からのコメント
㈱みなみ農産(生産者) 南さん
今回の様に三者が一同に会して意見交換ができたことで、普段は共有されることがない様な、お互いがさつまいもに求めている事を知ることができて良かったと思います。また、加工業者さんが試行錯誤をする中で、常識にとらわれないアプローチされており、私達生産者には考えつかない発想で目から鱗でした。北海道でのさつまいもの取り組みは今後加速していくと思いますし、今回の様にお互いがお互いを理解できる機会を設けることで、より北海道のさつまいもが盛り上がっていくことに期待をしています。
㈱MX(加工業) 岸田さん
パブリックな形で皆さんの意見を伺うことが出来たことはとても勉強になり、また、様々な有名パティスリーさんからアドバイスをいただけたことも貴重な経験になりました。意見交換の中で、具体的に「こういうものが欲しい」というお話があったことで、加工において洋菓子向けの材料に求められる仕様や、実際の使われ方を知ることが出来たので、加工を行う立場としてとても学びになりました。北海道のさつまいもはとても大きな可能性を感じていますので、私達も一緒になって技術を向上させていきたいと思います。
benbeya(洋菓子店) 土井さん
北海道産のさつまいもにはとても注目しています。我々洋菓子店は、生産者の想いやこだわりを汲み取って、美味しいお菓子を作ることを大切にしているので、今回のイベントは直接生産者さんとお話ができてとても意義のある時間だったと感じます。スイーツ王国さっぽろ推進協議会としても、高いポテンシャルを秘めた道産さつまいもを一過性のブームに終わらせず、全国に向けても新しい魅力ある北海道の食材のひとつとして発信しながら、洋菓子業界全体で盛り上げていければと思っています。
池伝㈱(卸業) 鈴村さん
私達卸業の業界でも、国内の主力生産地での減産で原料不足が問題となっており、北海道産のさつまいもを希望する声は非常に高まっています。現時点では試行錯誤の段階ですが、これからさつまいもの品質が向上し安定的な生産が出来るようになれば、北海道産さつまいもは全国に向けて広がっていくと感じています。そのためには、今回のように色々な意見が出される場があって良かったですし、まずは生産者のみなさんが交流して今後の安定した生産に繋がっていくことを期待したいです。
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ノーステック財団では、今後の北海道産さつまいものPRと消費拡大に向けて、今年5月に開催される「第28回全国菓子大博覧会・北海道 あさひかわ菓子博2025」への出展や、スイーツ王国さっぽろ推進協議会主催のイベントでの商品販売も計画を進めています。また、菓子づくりに需要が高い「加工ペースト」についても製品化を目指し、各事業者と連携をとりながらさつまいもを使った商品開発の体制を作り上げていきます。
近年、鹿児島地方のさつまいも収穫量が減少している背景もあって、代替産地の需要が全国的に高まってきています。その中で、北海道産のさつまいもは特に注目を集めていますし、一部では味についても高い評価も出始めています。今後の新たな産品としてさつまいもを育てるべく、企業の垣根を越えて活動する「さつまいも北海道プロジェクト」。その動向に注目が集まっています。
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今後、北海道産さつまいもを使った“さっぽろスイーツ”が誕生するかもしれません!
ぜひ、「さつまいも北海道プロジェクト」の取り組みについて紹介している記事もご覧ください。