
「ごはんを進ませないおかずをつくりたい」札幌で日々のお弁当を届ける『チムチム』中村さんが語る、食の哲学
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主に文化的な側面から北海道に寄与しているひと、新しい流れをつくっているひとたちの熱量や想いを可視化するMouLa HOKKAIDOの新たなコンテンツ「NORTHERN SHAPERS-北をかたちづくるひと-」。この「ひと」にフォーカスした連載の2回目にご登場いただくのは、"五感と身体に優しい食事"をコンセプトにした宅配弁当「free dining food Chim Chim(以下「チムチム」)代表の中村正敬さん。
「健康のためだから我慢する」のではなく、「人生を楽しむために、普段の食事を整える」。札幌を拠点に18年以上にわたって、「チムチム」を営む彼がつくる料理の根底には、自身の病気によって、一時は音楽活動を断念せざるを得なかった経験と、入院中に学んだ栄養学、そして「表現すること」を諦めたくなかった一人の表現者としての哲学がありました。
日々届く彩り豊かなお弁当は、単なる"健康弁当"ではありません。健康な体を維持すべく、食べることを我慢ではなく楽しみに変えて、暮らしを少しだけ豊かにするための提案です。ライフワークとして続けるバンド「ヌルマユ」の活動にも触れながら、中村さんが札幌で伝え続ける"食"と"表現"への想いを聞きました。
企画・編集|阿部薫(MouLa HOKKAIDO編集長)
「もうバンドはできません」――病気をきっかけに選んだ、もう一つの"表現"
―まずは、「チムチム」を立ち上げられた経緯から教えてください。ご自身の病気が大きな転機になったと、うかがいましたけど。
中村正敬(以下、中村): そうですね。理由は二つあって、一つは病気です。当時はバンド一本で生きていくつもりでした。全国ツアーにも出ていましたし、「これ(音楽)で食べていく!」と本気で思っていました。でも病気になって、お医者さんから「もうバンドはやめてください」と言われたんです。その言葉が、どうしても受け入れられませんでした。
僕にとって、音楽で表現することは生きていて一番楽しいことだったんです。だから突然それを失って、「これから普通に会社勤めをして生きていく」という未来が、どうしても想像できなかった。
―そこで料理だったと。
中村: 料理は小学2年生くらいから好きだったんですよ。親が共働きだったので、母がお金を置いて「何か買って食べておいてね」という家だったんですけど、それに飽きちゃって、勝手に台所に立って料理を始めました。レシピなんて持っていないから、テレビや漫画に出てきた料理を見よう見まねでつくる。もちろん全然違うものが出来上がるんですけど(笑)。でも、親はいつも「おいしいね」って食べてくれて。妹にはずいぶん試作品を食べさせていましたね(笑)。そんな経験もあって、料理はずっと好きでした。
ただ、仕事にはしたくなかった。当時の調理人業界は徒弟制度的なのが当たり前で「修業してなんぼ」の時代でしたから、自分の性格的に、そういう世界は向いてないなと思っていたから、料理だけは仕事にしないだろうなって。でも、病気でバンドができなくなって、自分に何が残っているか?と考えたとき、最後に残ったカードが料理だったんです。そして、入院中に栄養学を学びました。
糖尿病や高血圧、生活習慣病について学ぶ中で、「これをもっと早く知っていたら、自分は病気にならなかったかもしれない」と本気で思いました。料理と栄養学。この二つを掛け合わせたら、自分だからできることがあるんじゃないか。それが「チムチム」を始めた、本当のきっかけですね。
「健康食」を作りたかったわけじゃない。――人生を楽しむための"日々の食事"を届けたい
―病気を経験されたことが、「チムチム」の創業につながっていると。そこから18年にわたってお弁当をつくり続けている中で、中村さんが考えてきたのは、病気にならないための食事ではないですよね。
中村:そこは結構違うかもしれませんね。僕は「健康食を作りたい」と思って始めたわけではないんです。病気になって思ったのは、「人生を楽しめなくなる」のが一番つらいということでした。例えば、ラーメンが好きだった人が、「もう食べられません」って言われる。お酒が好きだった人が、「飲んじゃダメです」って言われる。病気になると、そういう"楽しみ"が一つずつ減っていくんですよね。だから僕は、「ラーメンは食べちゃダメ」とは思わないんです。むしろ、食べてもいい。ただ、その前後の日頃の食事を整えていけばいいんじゃないか、という考えなんです。
―なるほど!"我慢する食事"ではなく、大好物を食べられるように、日々の食事で体調を整えましょうと。
中村:ごちそうって、本来は特別な日に食べるものだったと思うんですよ。昔は外食だって、家族にとって一つのイベントでしたよね。でも今は、おいしいものが手軽に食べられる時代になりました。それ自体は、人類の文化としてすごく豊かなことだと思っています。ただ、その"ごちそう"が日常になってしまった。そこに、生活習慣病が増えた理由の一つがあるんじゃないかなとも思うんです。
―確かに1970年代に生まれて、現在50代の僕や中村さんからすると、昔は「今日は外食だ!」という特別感がありましたけど、今は手頃な値段で食べらるれところも多いから、すごく身近ですよね。
中村:そうなんです。便利になったからこそ、「今日はちょっと整えようかな」っていう意識も、一緒にもてたらいい。だから、僕は毎日の食事を担当したいんです。
ごちそうをつくる人ではなく、生活を支える食事をつくる人でいたい。
―オーガニックや無添加、ヴィーガンなど、食に対する考え方もここ十数年で大きく変わってきました。そのあたりはどう感じていますか。
中村:僕は、食べ物に悪者はいないと思っているんです。肉も魚も油も、人間には必要なものです。問題なのは、それらとどう付き合っていくか。でも世の中には、「これは絶対に食べちゃダメ」「これは身体に悪い」という情報も入ってきますよね。もちろん、それぞれに考え方があることは分かります。ただ、それが増えすぎると、食べること自体が難しくなってしまう気がするんです。
「何を食べればいいんだろう。」「何が正解なんだろう。」…そんなふうに迷ってしまう人も多いんじゃないかなと思います。だから僕は、あえてあまり語らないようにしています。聞かれたらもちろん話します。でも、「こっち(の考え方)に賛同してください」「これが正しいですよ」と誘導するようなことはしたくない。食べた人が、「なんかおいしかったな」「食べやすかったな」と感じてくれたら、それで充分なんです。
―「こう食べるべき」と教えるのではなく、まずはおいしく食べてもらう。その中で、食べた人が自分なりに何かを感じ取ってくれたらってことですよね。
中村:食べることって、本来はもっと自然な行為だと思うので「お腹が空いたから食べる。」それだけでいいはず。そこにいろいろな情報や概念が増えてきた時代だからこそ、僕は逆に、できるだけフラットな食事を届けたい。「健康だから食べる。」「オーガニックだから食べる。」そういうことではなくて、「今日もおいしかったね」で終われる食事をつくれたら、それが一番うれしいですね。
「ごはんを進ませないおかず」をつくる理由――"味わう"という時間までデザインする、お弁当づくり
―実際にお弁当をいただいて驚いたのは、見た目のボリューム以上にしっかり満足感があることでした。僕はどちらかというとよく食べる方なので、最初は「少し足りないかな」と思ったんです。でも食べ終わる頃には、ちゃんと満腹になっている。あれは、何か意図されているんですか。
中村: ありますね。実は僕のお弁当って、「ごはんを進ませないおかず」をつくろうと思っているんです。
―……ごはんを進ませないおかず?!
中村:はい(笑)。日本の食文化って、おかずでごはんを食べる文化じゃないですか。遥か昔は、お米をたくさん食べるために塩辛いものを少し口に入れて、ごはんをかき込む。それが一つの食べ方としてあったと思うんです。もちろん、その時代にはその時代の理由がありました。でも今は、お米をたくさん食べなければ生きられない時代ではありません。だから僕は、その食べ方を少し変えてみたいと思ったんです。
―つまり、ごはんを食べるためのおかずではなく、おかずそのものを味わってほしい、と。
中村:そうなんです。おかずを食べて、「ちょっとしょっぱいな」と感じると、人って無意識にごはんに手が伸びるんですよ。ごはんで味を薄めようとするんですね。だから僕は、おかずだけでもちゃんとおいしいと味わえるものをめざしています。ごはんは、ごはんそのもののおいしさを楽しんでもらいたい。そのために、お米にもすごくこだわっています。「チムチム」を始めてからずっと、「ごはんだけでもおいしい」と思えるお米を探し続けてきました。お米の価格が上がっても、そこだけは変えたくないんです。
とある日のチムチム弁当「ほろほろ煮込みのプルドポーク」 スパイスと塩で12時間煮込んだ豚のもも肉を使い、バターと生姜を効かせたマッシュポテトをソースに。毎週金曜はカレーを提供している
-そういう食べ方になると、自然と食べるスピードも変わりますね。
中村:まさにそこなんです。うちがつくるお弁当って、ひと口食べてすぐ「おいしい!」と感じる味じゃないと思うんですよ。「何だろう、この味」「これ、何が入っているんだろう」…そんなふうに探りながら食べてもらうことが多い。すると自然と咀嚼が増えて、食べる時間も長くなるんです。結果的に、少ない量でも満腹感につながる。だから「味わう」ということまで含めたお弁当なんです。
-だから僕も「もっと食べられるかな?」と思いながら、気がついたら満腹になっていたのか!
中村:そうだったらうれしいですね。「健康だから食べてください」ではなくて、「気づいたら食べ方が変わっていた」。そのくらい自然な変化があるのが、一番いいと思っています。
空腹じゃないと、メニューは考えられない
―毎日違うメニューをつくり続けるのも、本当にすごいことだと感心します。メニューはどんなふうに考えているんですか。
中村:実は一か月分を一気に考えるんです。20営業日なら20日分。それを一日か二日で全部つくります。以前は、一日一品ずつ考えていたこともあったんですよ。でも並べてみると、全然面白くない。その月全体の流れというか、ストーリーがなくなってしまうんです。だから今は、一気に考える。そのほうが自分の中で統一感が生まれるんですよね。
-20日分を一気に?!メニューを考える時は何かメモを見返したり、「以前これがおいしかったな」みたいな感じでストックを使ったりはしないんですか?
中村:しないですね。それよりも一番大事なのは、お腹を空かせることなんです(笑)。空腹じゃないと、食べたいものも、つくりたいものも浮かばない。だからメニューを考える日は、できるだけ何も食べずに。お弁当の最終的な味見もそう。お弁当を食べる人は、ほとんどがお腹が空いた状態で食べますよね。だったら、作る側も同じ状態じゃないと、本当の味は分からないと思うんです。
―そこまでお客様目線で考えますか(笑)。空腹そのものが、創作のスイッチになっている感じですね。
中村:空腹の時って、不思議と昔食べた料理を思い出すんですよ。「あのお店、おいしかったな」「あのソース、面白かったな」…そんな記憶が自然と出てくる。僕がメモを取らないのは、書き留めると、どこかで「真似しよう」と思ってしまいそうな気がしてしまうからなんです。おいしかった記憶だけを自分の中に残して、それがいつか自然と「チムチム」のメニューのエッセンスとなって出てきたらいい。そんなふうに思っています。
「チムチム」の厨房にてお弁当を盛り付ける様子
食も、音楽も。「自分を表現する」ということは変わらない――「ヌルマユ」と「チムチム」をつなぐ、一本の軸
―ここまでお話をうかがっていると、お弁当づくりも一つの"表現"なのかな?という印象を受けます。一方で、ライフワークとしてバンド「ヌルマユ」の活動もされていますよね。料理と音楽。一見まったく違うものにも感じるんですが、ご自身の中ではどういう関係なんでしょうか。
中村:今は、どちらもあって初めて自分なんだと思います。正直に言うと、お弁当をつくることって、すごくエネルギーを使うんですよ。毎月20日分のメニューを考えて、毎日同じクオリティで提供し続ける。同時に経営のことも考えなきゃいけない。でも、そんな自分をリセットできる場所がバンドなんですよね。
―お弁当づくりでかなりエネルギーを使うからこそ、バンドではまた違う形で自分を解放できる、みたいな?
中村:「チムチム」はお客さんからお金をいただいて、「ありがとう」と言ってもらえる仕事です。だから当然、ご意見もいただきますし、期待にも応えなければいけない。でもライブって、極端な言い方をすれば、その瞬間だけは演奏している人間が主役なんですよ。もちろん、お客さんを楽しませたいという気持ちはあります。でも、そのために自分を曲げることはない。まずは、自分たちが本気で表現する。それが結果的にみんなに喜んでもらえるんですよね。
―ライブでお客さんから「良かった!」と言われる時って、ご自身としてはどんな時だと思います?
中村:不思議なんですけど、自分の中にたまっているものを全部出し切れたときな気がします。仕事で悩んだことだったり、葛藤だったり。そういうものが全部音になって出ていく。だから、お弁当づくりで感じていたフラストレーションが、そのままライブのエネルギーになることもあります。
-とはいえ、それって単なるストレス発散というのとは、少し違う感じですよね?
中村:違いますね。もちろん結果として発散されている部分はあるんですけど、それ以上に、「自分を全部出せる場所」という感覚なんです。その瞬間は、とにかく自分たちがどこまで純度の高い表現ができるか。そこだけなんです。だから終わったあとに、お客さんが喜んでくれていたら、「ちゃんと伝わったんだな」と思える。その順番なんですよね。
-そう考えると、お弁当作りとライブでの演奏って、やっていることは全然違うけれど、「自分が納得できるところまで突き詰める」という部分では、共通しているのかもしれませんね。
中村:本当にそう思います。料理も、音楽も、結局は自分を表現しているだけなんですよ。ただ、その方法が違うだけ。病気になってバンドを続けられなくなったとき、「もう表現できない」と思ったこともありました。でも料理を始めて気づいたんです。「あ、自分は料理でも同じことをやっているんだ」って。だから僕にとっては、料理も音楽も、どちらも同じくらい大切なんです。
自身のバンド「ヌルマユ」のライブでの中村さん
ヌルマユ:1998年結成。Gt.&Vo. 永井康裕、Dr. 中村正敬の2ピースバンド。2005年に1st AL『君の部屋の窓に僕の空』、2006年に2nd AL『酒乱とスマイル』をリリース。2007年、中村の病気療養のため活動休止するも、2011年、3rd AL『やわらかい右手』を発表し活動再開。現在も札幌を拠点に精力的に活動中。
「毎日の献立が少し楽になるだけでいい」――北海道で積み重ねてきた18年を、次の誰かへ
―最後に、これからのことを聞かせてください。「チムチム」として、この先やってみたいことはありますか。
中村:実は、ここ数年ずっと考えていたことがあるんです。毎日お弁当をつくっていて思うのは、自分って、すごく主婦の方に近い仕事をしているなって。毎日の献立を考えて、限られた予算の中で食材をやりくりして、できるだけ無駄を出さずに…これって、家庭の台所と本質的には同じなんですよね。
―確かに、お弁当屋さんというより、毎日家族のご飯を考える感覚に近いですね。
中村:そうなんですよ。しかも今は共働きの家庭も多いですし、毎日の献立を考えるだけでも大変ですよね。「また同じようなものになっちゃった」「今日は何をつくろう」…そんなふうに悩んでいる人が、本当に多いと思うんです。だったら、自分がこの18年間で積み重ねてきた考え方を、少しでも役立ててもらえないかなって思ったんです。
レシピではなく、「考え方」を伝えたい
―それが「チムチム算」につながるんですね!
中村:「チムチム算」はレシピではないんですよ。料理の"考え方"なんです。大体の方は「今日は◯◯にするか」とメニュー名から考えてしまうと思うんですけど、そうではなくて、旨みとなる食材・野菜・調味料・香味料と料理を一度分解して考える。
いま挙げた項目の空欄のマスがあったとして、「食材は鶏肉」「野菜の欄にはキャベツ」「調味料は塩」「香味料はコショウとクミン」みたいにして、その日、家にある食材を当てはめてマスを埋める。調味料の分量は一定で、塩分量は食材の0.8%、香味料は0.1%を基準に0.3%までに抑える。そして、どんな方法(焼く・煮る・蒸すなど)で調理するのかを決める。
「これとこれは合わないんじゃないか?」とは考えなくていい。美味しくならないのは、やり過ぎたか足りないかのどちらかなので、塩分量を守れば基本的に大丈夫なので。そうしていくと一つの料理になる。そんな仕組みを考えてみたんです。だから同じ公式を使っても、家庭によって全然違う料理になる。メニュー名は結果でしかない。それが面白いと思っています。
-「何をつくるか?」ではなくて、「どう組み合わせていくか?」みたいなことですかね?
中村:僕が伝えたいのは、まさにそこなんです。毎日の食事の支度が少しだけ楽になって、少しだけ続けやすくなったらいいなって。だから料理教室でも「このレシピを覚えてください」という場所にはしたくないので、「チムチム算」を用いています。「これを知ったから、明日から献立を考えるのがちょっと楽しくなりそう」って思ってもらえたら、それで充分なんです。
-最後にもう一つだけ。中村さんは北海道で活動し続けることにも、強い想いがありますよね。
中村:ありますね。僕は札幌で生まれて、札幌で育ちました。だから、この土地で病気になったことも含めて、自分の人生なんです。もし僕の経験や知識が誰かの役に立つなら、それはまず北海道の人たちに還元したい。東京へ行って同じことをやることもできるのかもしれません。でも、僕にはそこまでの思い入れはないんです。この街だからこそ、続けたい。見慣れた景色があって、その中で暮らしている人たちがいる。その人たちの毎日が、少しだけ良くなればいいなと思っています。
編集後記|取材を終えて
僕が「チムチム」を知ったのは、ラジオ番組の企画に携わっている時に、ゲストで中村さんに来ていただいた頃なので、2018年頃だろうか。仕事仲間の女性たちがよく食べていて、ヘルシーだけど食べ応えがあると好評だった。本文中にもある通り、僕にとってはボリューム的に足りるかな?と思っていたのだけど、味付けは濃くないのに、味わい深く満足度の高いお弁当で、その後、コロナ禍で外でのランチができなかったり、自宅での作業が続くようになった頃は、よく注文するようになった。最近は仕事場の環境から、お弁当を頼む機会が減ってしまったため、クリスマスのスペシャルボックスやおせちが楽しみになっている。
病気をきっかけに、料理の道へ進んだ人。そう聞くと、「健康のための食」を語ってもらうインタビューになることをイメージしていた。しかし、中村さんが繰り返し話していたのは、健康のための「我慢」でも「制限」でもなく、「人生を楽しみ続けるための日常食」だ。そして、「ごはんを進ませないおかず」、この言葉が衝撃だった。
料理も、音楽も、表現である。それで誰かを変えようとするのではなく、ただ自分が信じたものを丁寧に積み重ねることで信頼を得る。その姿勢は、毎日届けられる一つのお弁当にも、ライブハウスで鳴らす一音にも、同じように宿っているのだろう。取材時に着ていたコックコートはすてきなチェック柄で、料理教室の時に着るという。聞けば、洋服のデザインをしている奥様のお手製なんだそう。こんなところにも、中村さんの楽しむ姿勢や、自分を表現することへのこだわりを感じた。
「チムチム算」は、レシピではない。料理を考えることを、少しだけ楽しくするための"新しい公式"なのかもしれない。そして、それはきっと、中村さんが18年かけてたどり着いた答えでもある。この「チムチム算」を料理教室という人数が限られる場だけでなく、もっと多くの人にシェアしたいという相談を受けて、MouLa HOKKAIDOでは、今後また違った形で紹介したいと思っている。
