メルカリCEO登壇!ネット業界トップランナーが札幌集結 生成系AIとWEB3の未来を展望、熱狂のB Dash Campレポ(2/2)
インターネット業界のトップランナーが集う国内最大規模の招待制ビジネスカンファレンス「B Dash Camp」。2011年から全国各地で行われているビッグイベントが、2年連続で北海道札幌市を会場に開かれました。前編の記事ではChatGPTなど生成系AIに関するパネルディスカッションやメルカリの山田進太郎CEOの対談セッションをご紹介しました。今回の後編では、若手起業家が投資家にプレゼンする「ピッチコンテスト」の熱い戦いや、商機を広げようと会場に集まった北海道・札幌のスタートアップや行政の動きもご紹介します。
5分で語れ!!白熱ピッチ 「AIで商談解析」「FAXをバスター」
ピッチコンテストは、ビジネスの成長を目指す起業家が投資家たちに出資を呼びかける舞台であり、全3日間にわたるB Dash Campのファイナルを飾るイベントです。会場にはベンチャーキャピタルや大手金融機関など日本の投資家が集結。審査員にはLINEやマネックスグループなど大企業の経営幹部や有名起業家が顔を揃えました。
1社当たりのプレゼン時間はわずか5分。事前審査を勝ち抜いた10社が予選ラウンドを戦い、決勝には6社が進出しました。AIやクラウドの力で業務効率化を目指すサービスを中心に、革新性の高いスタートアップが勢ぞろいしました。
株式会社ザブーンは、ITツールの活用が十分には進んでいない海事業界の労務管理や船舶の動静管理などをまるごと手掛けるクラウドサービス「MARITIME 7」をプレゼンテーション。戸高克也代表取締役は「船の運航ルールは世界統一。MARITIME 7は多言語対応だけで世界の海で勝負できる」と海外展開のビジョンを強調しました。
株式会社battonの川人寛徳代表取締役がプレゼンした「FAXバスターズ」は、企業ごとにバラバラの書式で届く発注書のフォーマットをAI技術で自動統一するサービス。商品やサービスの受注登録作業を大幅に効率化でき、すでに国内企業で導入実績が広がっているとアピールしました。
「市場規模の見積もりが小さく見える」「競合に対しての優位性は?」「ChatGPTを利用したサービスなら、そのシステム利用価格がボトルネックになりそう」ー。事業の成長性や実現性について、審査員からは鋭い質問が寄せられました。ビジネスに揺るぎない自信を持つ起業家と百戦錬磨の投資家による緊張感あるやり取りが続きました。
緊張の結果発表です。
FAXバスターズの「batton」はスポンサー1社による特別賞を獲得し、MARITIME 7の「ザブーン」はスポンサー2社の特別賞と準優勝に輝きました。そして、ピッチコンテストの頂点に立ったのは…。
オンライン商談の映像と音声を自動で文字おこしし、要約と感情分析も行うAIサービス「JamRoll」の株式会社Poeticsが最高賞に選ばれました。山崎はずむCEOは東京大学大学院で哲学を研究し、新宿・ゴールデン街でバーテンダーもしていたという異色の経歴の持ち主。「私たちの会社はずっとAIだけに賭けてきた。紆余曲折も経て今のプロダクトになり、新規の投資家もつくなかで、今回の受賞は本当にありがたい。生成系AIで積極的にグローバルに出ていきたい」と決意を語りました。
終了後の講評では、ある審査員から「今回のピッチで実際に出資してみたいと思うスタートアップが見つかりました」との発言も飛び出しました。どれほどの金額の資金調達が実現するのか、見ているこちらもドキドキしてきます。過去の優勝企業には上場を果たした事例もあり、今回出場した6社の成長が本当に楽しみです!
目指せ資金調達!投資家探す道産子スタートアップ
「あ、北海道新聞さんですか。今、北海道でこんなお仕事をしてますので是非ご紹介を…」。報道の腕章をつけて会場を歩いていると、沢山の人に声をかけられました。B Dash Campは日本中から約1000人もの人々が集い、ビジネスの可能性を広げる場。投資家を探す起業家もいれば、起業家を探す投資家もおり、普段はなかなか出会えない人との「ネットワーキング」が大きな価値になります。
お昼時、隣の席に座った男性3人組に声をかけられました。札幌市のスタートアップ「Medi Face」のメンバーです。現在25歳で、札幌新川高校を卒業した同級生。高校の同級生と事業を立ち上げるって、なんだかバンドみたいです。事業内容は、AIドクターによるメンタルチェックとプロ人材によるメンタルケアを組み合わせたサービス。「北海道にいると投資家と出会う機会が少なく、資金調達のチャンスを探して参加しました。今回は新しいベンチャーキャピタルにも出会えて良かったです」。手応えは上々のようです。
声を掛けられるだけでなく、私からも声を掛けてみようとチャレンジしてみました。1人目は、企業と顧客のコミュニケーションを支援する東京のITスタートアップ「コミューン」の岩熊勇斗執行役員。今回は会社の代表取締役がパネルディスカッションにも登壇したそうです。参加の感想を聞くと「新型コロナでスタートアップ同士の横の繋がりがしばらく途絶えていました。ようやく流行が収束し、久々に会った仲間たちがそれぞれの場で頑張っていることを確認できて良かった」と話してくれました。
筆者もよく読んでいる経済メディアNewsPicksのブースを発見しました。近くを歩いていたのはキャスティングディレクターの古屋荘太さん。「なぜB Dash Campに来ているんですか?」と素朴な疑問をぶつけてみました。
「私たち自身が創業10年弱のスタートアップでして、ここに集まる起業家の皆さんとは同じ立場であり、事業の成長をともに目指す一蓮托生の存在です。スタートアップのサービスは新しいがゆえに分かりにくい面もあるのですが、世の中にその価値を伝えることが私たちNewsPicksのミッションだと思っています」
そうだったのか、と納得。スタートアップの価値を伝えるのもまたスタートアップ。古屋さんの真っ直ぐな言葉に、支え合い成長する起業家たちの絆の強さを感じました。
北の大地から世界を変える起業家を!札幌市もパックアップ
今回はB Dash Campと札幌市のコラボレーションで、北海道や札幌のスタートアップに特化したピッチコンテストも開催されました。NFTやVRなどの先端テクノロジーに関する出場企業が多いなか、参加した全6社の頂点に立ったのは標津町の農業スタートアップ「エゾウィン」。トラクターなど農業機械のシガーソケットに通信機器を差し込むだけで農作業の進捗状況を地図上で可視化する画期的なサービス「レポサク」をプレゼンしました。
札幌市と一般財団法人さっぽろ産業振興財団、株式会社D2Garageは2019年から、北の大地・北海道からスタートアップを生み出すプロジェクト「Startup City Sapporo」に取り組んできました。今回のB Dash Campはゴールドスポンサーとして支援し、北海道や札幌市で生まれた起業家の魅力を発信。札幌市イノベーション推進課の阿部仁志課長は「地元で生まれたスタートアップが飛躍できるよう、道外から投資家に足を運んでもらえるB Dash Campのような機会を増やしていきたい」と力を込めました。
テレビやネットで見かける著名な経営者や起業家が数多く登壇し、グローバルや東京で今何が起きているかをリアルタイムに語ってくれたB Dash Camp。今回の取材は時代が変わるスピード感を肌で感じる貴重な機会になりました。経営者向けの招待制カンファレンスということもあり、誰でも自由に参加できる訳ではありませんが、札幌で行われることには本当に価値があると感じます。もし来年の開催があるなら、テクノロジーを学ぶ高校生や大学生、道内の次世代経営人材が少しでも参加できる仕組みがあればいいなと思いました。(石川泰士)