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下川のきょういく取組事例~キッズスクール

下川のきょういく取組事例~キッズスクール

下川町の「2030年における下川町のありたい姿(下川版SDGs)」のビジョンのひとつとして、教育や子育てに関連する「子どもたちの笑顔と未来世代の幸せを育むまち」というビジョンがあります。このビジョンをさらに具現化するために下川町では子どもを育む地域の姿として「地域共育ビジョン」を掲げて、日々様々な取組みを進めています。今回はたくさんある「共育」の取組みの中から「キッズスクール」のコーディネーターを担当されている平間美海さんにお話を伺いました。

放課後の子どもたちの居場所を作るために全国的な事業として実施されている放課後子ども教室ですが、下川町では通称『キッズスクール』と呼び、全国的にも珍しい「体験活動」に重きを置いたプログラムを独自に展開されています。

2021年から参加されている平間さんは、小学生低学年向けの工作だけではなく、小学校高学年や中学生も参加したくなるような、難易度が高くチャレンジしがいのあるような様々なプログラムを日々考えられています。

今回は、そんな平間さんのコーディネーターとしての仕事について詳しくお伺いしていきます!

社会教育に視点を置いたプログラム作り


(編集部)
まず内容に入る前に平間さんご自身について少しお話を聞けたらと思います。平間さんのご出身はどちらなんですか?

(平間)
生まれも育ちも大阪です。東京でしばらく暮していましたが、結婚・出産諸々を機に下川に来ました。夫が下川出身だったのとフロントエンジニアでどこでもできる仕事をしているので、じゃあ行くかみたいな軽い気持ちできました笑。

(編集部)
なるほど、そういったご縁があって下川町へ移住されたんですね。では、さっそくですがキッズスクールについてお伺いさせてください。プログラムは最初どんなことから考え始めたんですか?


2021年のプログラム


2022年のプログラム


(平間)
私が担当した当初、小学校高学年の子供たちが全然来なくて、4年生以上の子供たちに、何で来ないの?って聞いたら、実施している内容が少し低学年寄りだったこともあり「キッズ行ってるの恥ずかしい」という意見が大半でした。そこで、4年生以上にもウケるものを取り入れることから考え始めました。その甲斐あってか、去年はだいぶ4年生以上も来てくれるようになったんです。

次に考えたのが、中学生をどう取り込むかです。下川町の中学生は帰宅部の子も多いので、ぜひ参加してもらいたいなと考えました。中学生向けなので、工作をするにしても出来上がりのクオリティが高いものをやったり、少し勉強的なカリキュラムでも今まで出会ったことのないような種類の学びを入れるとか色々工夫しました。

先日やってみて好評だったのが「フォーリーアーティスト講座」です。映画の効果音を作る仕事のことをフォーリーアーティストっていうんですけど、その職業体験的な講座をしたときは、参加した子供たちは楽しんでやっていました。

中学生の参加人数も、昨年と比較すると倍近く増えたと思います。


中学生向けのプログラムでは、イベント企画から運営までを実施


(編集部)
このカテゴリー対象はどういう分け方なんですか?

(平間)
ベーシックは1~6年生まで一応全員参加できますが、レベルが1~3年生向け。参加したい高学年はもちろん参加OKなのですが、内容的には基礎的というか結構簡単なのでつまらないかもしれません。
逆に、アドバンスは4~6年生しか参加できません。クエストラボは中学生向けで、クエストラボ長期っていうのは3か月から半年ぐらいかけて一個のことに集中的に取り組む内容になっています。

(編集部)
長期だとプログラムを考えていくうえで、少し時間をかけて取り組めるものが良いかな?という発想で考えたのですか?

(平間)
中学生って単純に工作作って終わりよりは、何かできた「達成感」が体験できる方が喜んでもらえるので、たくさん関わりを持って一緒に切磋琢磨していく過程で成長が体験できるプログラムが良いかなと考えました。

一番直近にやったのは、8月から10月までの3か月間でハロウィンのお化け屋敷のイベントを企画から運営まで全部やってもらいました。

(編集部)
企画・運営すべてですか!インターンみたいですね。

(平間)
子供たちには、「お客さん入るからお金払ってでも来たいと思わせるものを考えてみてね!」と少しハードルの高いオーダーを出しました笑
誰かに教えてもらえるのではなく、自分たちでゼロから考えるという流れだったので大変だったとは思いますが、その分ものすごく達成感が得られたと思います。

(編集部)
そのような体験ができると、子供たちも一気に成長しそうですね。

(平間)
すっごい成長します!初めは客観視できないというか、自分たちの楽しい事しか見えてない状態で入って、次第に客観視できるようになって、脚本とかも自分で頭の中で動きを辿れるようになったりとか。

(編集部)
すごいな、一番必要な成長ですよね。

子どもたちの興味の幅を広げる

(編集部)
他には・・・、ボイストレーニングのプログラムもあったのですね。本格的なカルチャースクールのようにプログラムが充実してますね。

(平間)
はい、ボイトレもやりました。私が高校の演劇科で声楽をがっつりやっていたので。
ボイストレーニング1回目の時はアドバンスの存在はまだ全然知られてなくて、4年生1人しかこなかったんですけどね。

(編集部)
今年ですごく改革が進んでいますね。素晴らしい!

(平間)
かなりスピーディーに展開しているので、何がどの程度変わったかはまだしっかりと浸透していないかもしれませんが、大切なことは、こうやって継続していくことだと思います。継続することで参加してくれる子供たちも自然と増えていくと思いますし、そこに期待しながら今はやるべきことをしっかり丁寧にこなしていきたいと考えています。

(編集部)
実際の活動を通して解決したい課題などはありますか?

(平間)
子供たちに何をやりたいか聞いても、過去にやったことをもう一度やりたいという意見は出るのですが、例えばテレビを見ていて面白かったことを、自分でも挑戦してみたい!など、過去に経験したことのない、全くの新領域からチャレンジしたいテーマがあまり出てこないのが少し残念に感じています。

例えば、漫画家になりたいから編集者の仕事を実際に見てみたい!とか、将来の夢や目標に近づけそうなことを体験してみるのも面白いとは思うのですが、その辺の意見はまだまだ少ないので、今後は子供たちと対話を繰り返しながら、もっと自由に発想できるようになるためのトレーニング的なプログラムを入れてみても面白いかな?と感じていました。子供たちも決して、発想力が無いわけではなく、単純に経験不足とか知見不足が要因だと思うので、その解決ができれば、全体的にまた面白い流れが作れると思います。

平間さん自身の得意を活かしたプログラム

(編集部)
今年のプログラムで平間さんが直接講師をされたのってどれくらいあるんですか?

(平間)
ほとんどとは言わないですが、自分の「引き出し」から組み立てるプログラムが多いと思います。
個人的に気合を入れて臨んだのは、5月に実施した幕末明治講座です。

(編集部)
幕末明治講座!?具体的にどのようなことをやったのですか?

(平間)
下川町の中学生は、修学旅行で函館に行くのですが、よくよく聞いてみると、修学旅行に添乗員さんもつかないようで、せっかく歴史のある函館に行くのに、事前の歴史的情報が少ないかな?と思っていて。しかも修学旅行から戻ったら、「まとめ新聞」を作る予定とのことで、この状況で得られる情報も限りがあって、新聞作るのも大変だと感じ、急遽「幕末明治講座」をやることにしました。また私の話になるんですけど、私、実は幕末のオタクでして、とても詳しいのです笑。オタクというかもはや研究者に片足突っ込んでると言っても過言ではないくらいなので、大得意分野なんですよ笑。

(編集部)
どんだけ引き出しあるですか笑。ちなみに幕末についてはいつから深掘りしているのですか?

(平間)
もう何年もやっていて、実は論文も書いています。なので、函館は専門分野ということもあり、かなり本気で取り組みました。講座用の資料も何十ページというボリュームにして、めちゃめちゃ専門的に作りました。幕末界隈の知り合いがたくさんいるので皆を監修に入れて非公開の場所の写真とかも貰ったりして作りました笑。

(編集部)

へぇ~!子どもたちはついてこられましたか?

(平間)
ん~、どうだろう?明らかにマニアック過ぎてましたからね笑。

(編集部)
いいですね!子供たちの「まとめ新聞」はどうだったんだろう。

(平間)
めちゃめちゃ詳しい「まとめ新聞」が出来上がったみたいです!それを中学校の先生が見た時に、とても「まとめ新聞」のレベルが高いんだけど、なんでこうなったんだろう?と不思議がっていたので、事前にキッズスクールの講座で「幕末明治講座」をやったことを内容とともに伝えたら、すごく褒められました。

(編集部)
ところで、幕末にときめくようになったきっかけは何かあったんですか?

(平間)
元々寺社仏閣とか歴史関係は好きで、大阪出身なので京都も近いし。小さいときから好きだったのですが、そもそものめり込む体質なので色々調べてるうちにいつの間にかこんなことになっちゃいました。
これはかなり本気でやったので、大人の本気に子供は引いたような気がします笑。

(編集部)
いや、でも子どもたちにとって良い影響になってるんじゃないでしょうか。

本日はありがとうございました。

※平間さんは、2022年12月末で退職されました。

北海道には食や観光だけではなく、毎日の暮らしの中にも自慢したい「魅力」がたくさんあります。今回は下川町独自の教育に関する取り組みについてたくさんの方に知っていただきたくシリーズで紹介しています。


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