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サウナに農業、スタートアップ!?北海道のホットトピックを徹底議論 ファームノートサミットに行ってきた!

サウナに農業、スタートアップ!?北海道のホットトピックを徹底議論 ファームノートサミットに行ってきた!

農畜産業からサウナ、環境問題、プロスポーツまで北海道のホットトピックを網羅した道内最大規模のカンファレンス「ファームノートサミット」が12月6日、札幌市中央区のロイトン札幌で開かれました。北海道の未来を創るビジネスリーダーが勢ぞろいした白熱のトークを「いいとこどり」でレポートします!

登壇者はなんと100名超。キッコーマンなど誰もが知る有名企業の経営層や酪農DXのパイオニア、海外のスタートアップピッチで優勝を重ねる起業家ら、札幌ではなかなかお話を聞けない「超レア」な顔ぶれが集結しました。ディープな議論を繰り広げる「オフレコセッション」も含め、大小6会場で25セッションを行いました。


本サミットは、牧場管理などのデジタルトランスフォーメーション(DX)を手掛ける帯広市の酪農スタートアップ「ファームノート」(小林晋也社長)が主催し、今回が10回目です。2014年から帯広や東京などで開かれてきましたが、今回は規模を拡大して初めて札幌市で開催しました。

これほど大きなカンファレンスを地方のスタートアップ単独で主催するのは非常に珍しく、背景には北海道に暮らすビジネスマンや経営者に新たな知見と刺激を広げたいとの思いが込められています。凄いですね!。「ディープすぎる酪農」「今、道東がアツい!」「新時代の飲食徹底討論」―。尖った議論が期待できそうなセッション名がずらりと並びました。

今回私たちが潜入取材したのは、MouLa Hokkaido の読者も大好きな「サウナ」と「お酒」、そして日本最先端の「スタートアップ」に関するセッション。どんなお話が聞けたのでしょうか。

北海道のトップサウナー集結!!地域を語る激アツセッション


サウナセッションには、日本のサウナシーンを牽引する4名の道内在住サウナ―が登壇しました。「ととのえ親方」の愛称で活動する日本サウナ学会代表理事・松尾大さんが報告したのは、サウナを活用した世界各地のまちづくり。イタリアの小さなスノーリゾートが、サウナプロジェクトで観光地として再生した事例をスライドで紹介しました。


イタリア・ヴァルダーオラ「Hub of Huts」

松尾さんによると、サウナを活用した「ウェルビーイング」のムーブメントは世界中に広がっていて、発祥の地であるヨーロッパはもとより、ニューヨーク、シンガポール、台湾でも次々と施設がオープンしているそう。そんな中でも特に注目されている国が、実は日本!。特に北海道は「サウナタウン」として高いポテンシャルがあると松尾さんは話していました。


十勝サウナ協議会の後藤陽介会長は「十勝サ国プロジェクト」の取り組みを紹介。新得町の「くったり温泉レイク・イン」で真冬の屈足湖に穴をあけサウナの後に湖水につかる「アヴァント体験」を売り出したところ、冬場は休業していた施設が今では約7割の稼働率になったと報告しました。

サウナがキーコンテンツとなって世界中の「ローカル」が活性化している事例は、北海道にも大いに参考になるものでした。サウナの魅力を語るみなさんの表情はイキイキとしていて、楽しくためになるセッションでした!

北海道の酒づくり 躍進のキーマンが明かすココだけの話


「お酒」セッションの顔ぶれも超豪華!。北海道の酒造りに新風を吹き込んだ「上川大雪酒造」の塚原敏夫社長に、今や世界の美食家にも認められるワイン産地・余市の齊藤啓輔町長、さらにはエスコンフィールド北海道に世界の野球スタジアムで初めてブルワリーを作った「ヤッホーブルーイング」の井手直行社長。サツドラHDの富山浩樹CEOがモデレーターを務めました。



セッションはヤッホーブルーイングの「YONA YONA ALE」で乾杯からスタート!


上川大雪酒造の塚原社長(右)とモデレーターのサツドラ富山CEO

上川大雪酒造の塚原社長は、野村証券OBの元証券マン。北海道出身の三國清三シェフと出会ったことが縁で、三國シェフが上川町で開業したレストランで働くようになり、雪に閉ざされる冬場の売上確保のため日本酒造りを始めたそうです。順風満帆にも見える上川大雪酒造の歩みですが、開業時は逆風が吹いていたと言います。

「尊敬するビジネスマン10人に酒造りを相談したら全員に反対されました。なぜワインじゃないの?なぜ上川なの?って言われて。私にも勝算は無かったけれど、(賛同者がいない)『底値』で始める方が値上がり幅が大きく、証券マン的にはそこだと思った。皆に賛成されたら始めなかった」。塚原社長が明かした驚きのエピソードに多くの聴衆が引き込まれました。

また「北海道は『ポテンシャルがある』とよく言われますが、それを聞いて私は腹が立つんです。それはつまり、ポテンシャルを潰し切れていないと馬鹿にされているということ。だから、ポテンシャルを潰すためにチャレンジを続けています」と力を込めました。思いが熱すぎます…!


余市町の齊藤啓輔町長(左)とヤッホーブルーイングの井手社長

余市町の齊藤町長は、ニッカウヰスキー創業の地として知られる余市が、「ワインの街」として世界に認知されるまでのまちづくりを紹介。ブドウ品種を欧米の主流であるピノ・ノワールやシャルドネに切り替えるための補助金制度を導入し、ワインの高品質化により世界のベストレストラン常連の「ノーマ」のワインリストに余市産が入ったことなども報告しました。

齊藤町長は「余市のワインに世界に持っていくには、針の穴を通すようなマーケティングとブランディングが必要」と語った上で、人口わずか400人でありながら高級ワイン「ロマネコンティ」の産地として富を集めるフランス・ブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネ村の事例も紹介。人口減少と高齢化が進む余市町の現状にもふれ「(町の施策としても)総花的に資源を投資すると何もできなくなる。(批判もあったが)ワインに一点集中した」と振り返りました。

大企業とスタートアップの共創 取り組む意義は?


このセッションでは、大企業とスタートアップという対極にある組織同士の「共創(協業/コラボレーション)」の可能性について、ファームノートHD代表取締役の小林晋也さんがモデレーターとなり、これまで500件以上のスタートアップの上場支援を手掛けたタスク代表取締役の竹山徹弥さん、元パナソニック取締役で創援代表取締役の榎戸康二さんとディスカッションしました。

事前台本なしというライブ感のおかげか、ディスカッションは大いに白熱。小林さんが語ったのは「異端児がイノベーションをリードする」大切さです。パネリストからは、大企業として「異端児」的な人材を採用することが難しい実情があるからこそ、異端児が自身の強みを最大限発揮しているスタートアップとの協業によりイノベーションを自社に取り込むことができるのでは、との提言もありました。

世界を変えるスタートアップの「ショーケース」

最後にご報告するのは「サステナブルインパクト・ショーケース」。革新的なプロダクトやサービスで持続可能な社会づくりを目指す、いま注目のスタートアップを日本全国から集めたセッションです。農業や林業など一次産業に関する課題解決を目指したビジネスから、最新テクノロジーを活用したプロダクトまで計12社がピッチ(事業発表)。各社の持ち時間はわずか7分。名前の通り、まさにスタートアップのショーケースです。


札幌市のスタートアップ「komham」。西山すの代表取締役は、生ごみを高速分解する微生物群「コムハム」を取り入れたスマートコンポストを開発し、日本全国に展開中。微生物群はもともと西山代表の父が見つけ出したものといい、生ごみ分解の仕組みに関しては学会発表も行っています。

このほかにも、北海道を含む日本中の木材生産者と設計者をつなぐ売買プラットフォームを開発した「森未来」や、酪農業の収益力をあげるために乳牛に和牛の受精卵を移植して高単価な子牛を産ませる「North Bull」など革新的なスタートアップのピッチ(事業発表)が相次ぎました。


審査員10名による審査の結果、インドなど乾燥地域の農地の水不足を解消するため従来廃棄されていた作物残渣を再利用して超吸水性ポリマーを開発した沖縄のスタートアップ「EF Polymer」がGOLD賞を受賞しました。「え!?世の中にはそんなサービスが生まれているの??」と思わず呟きたくなるほどインパクト抜群のセッションでした!

1日いるだけで脳みそがゴシゴシ洗われるような刺激に満ちた「ファームノートサミット」。次回はぜひあなたもご参加を検討してみてはいかがでしょうか!


この記事を書いたモウラー

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