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福岡発4ピースバンドmuque、札幌で魅せた"無垢"な音楽の力

福岡発4ピースバンドmuque、札幌で魅せた"無垢"な音楽の力

MUQUE TOUR 2025 "RIDE ON!" SPiCE SAPPORO公演レポート

「お、これは絶対売れるぞ」——初めてmuqueを聴いた時の直感は間違っていなかった。

2025年6月22日、札幌・SPiCE SAPPOROで開催されたmuqueのツアー公演は、ソールドアウトの熱気に包まれていた。会場に足を踏み入れた瞬間から感じられる熱量は、このバンドが北海道でも確実にファンベースを築いていることを物語っていた。観客層は20代を中心とした若い世代が多く、彼らの音楽が同世代に刺さっている証拠でもある。

音楽番組『バズリズム02』の「今年コレがバズるぞ!2025」で1位に輝いた福岡発の4ピースバンドが、この日北海道のファンに見せたのは、ジャンルに囚われない自由で"無垢"な音楽だった。手前味噌ながら、私の「売れるぞセンサー」の的中率は9割を超える。そのセンサーが最初にmuqueに反応したのは正解だったと、改めて確信した夜だった。

muqueサウンドの魅力

muqueの最大の魅力は、その絶妙な音のバランスにある。これは2022年5月の結成から3年弱で培われた、4人の絶妙な化学反応の賜物だ。

リリック担当でもあるボーカルのAsakuraは決して声を張るタイプではない。彼女の少しブレスを含みがちな柔らかい響きの声が、楽曲に込められた想いをグルーブに乗せて歌い上げる。この歌唱スタイルが、muqueサウンドの心地よさの根源となっている。耳触りがよく、グルーブ感たっぷりでありながら決してうるさくない——この絶妙なバランス感覚は、ライブで聴くとより一層際立つ。

ベースのLenonとドラムのtakachiがしっかりと下を支え、ギターのKenichiが全体のバランス調整を果たし、その上にAsakuraの声が乗る——まさに理想的な三角形の構築だ。特筆すべきは、ドラマーでありながらトラックメイクとアレンジを手がけるtakachiの存在感だ。彼のUS、UKに留まらず、ASIANグローバルビートを含むワールドワイドな音楽への造詣が、バンドサウンドに同時代性の高いトラックを生み出している。

ギターのKenichiは決して主張しすぎることなく、楽曲全体の中で最適なポジションを見つけ出す。彼のギターワークは、まさに「全体のバランス調整」という表現がぴったりで、4人のアンサンブルを支える重要な役割を担っている。
とはいえ、ソロでも見せ場をしっかり作っている。確かなギターテクニックと全体を俯瞰して捉えることができる音楽センスがあるからこそ、前後のポジションをしっかりと見極め立ち振る舞うことができているのだろう。

オーディエンスとの一体感を生むセットリスト


Photo : Tadaki Ryuto

17曲にわたるセットリストは、バンドの多彩さと成長を物語っていた。そしてそれぞれの楽曲が、観客との絶妙な距離感を保ちながら会場を一つにまとめ上げていく。

完璧なオープニングから始まる物語

オープニングの「Ghost」は、少々ダークな楽曲でありながら絶妙な選曲だった。Asakura本人が「嫌味を少し濁して書いた」と語るこの楽曲は、嫌味なワードを含みつつもtakachiの音にピタッとはまる、まるで言葉遊びのような構成になっている。実際に歌ってみると分かるのだが、この語呂がちょうどいい感じにリズムにハマり歌いやすい。シンプルに縦ノリしやすい楽曲を1曲目に持ってきたのは、オーディエンスにとっても徐々にエンジンを温めるにはもってこいの選曲だった。

間髪入れずに始まった「456」では、会場の熱量が一気に急上昇した。サビ前の「A.B.C.D交わす言葉残す奇跡」でのオーディエンスのクラップから、Asakuraの「さっぽろ!」、そしてオーディエンスの「うぉぉぉぉーー!」という流れで、会場のテンションが一気に上がる瞬間は圧巻だった。先程の「Ghost」もそうなのだが、サビ入り直前での「間」が「これから始まるぞー!」という期待感を高める。音は消えるが、音楽は止まっておらず、グルーブは加速している——この演出の妙が、観客の心臓の高鳴りをより一層大きくしていく。

ライブならではの一体感


Photo : Tadaki Ryuto

特に印象的だったのは「tape」での"なってしまったシンガロング"だった。サビでAsakuraが「風にSay!」と投げかけると、オーディエンスが続けて「なってしまったー」「僕はなってしまったー」「君もなってしまったー」「夢はなってしまったー」と歌い継いでいく。この瞬間こそ、「ライブはこれが楽しいんだよな」と改めて思わせてくれる、ライブならではの醍醐味だった。

そしてお待ちかねの「my crush」!Lenonがステージ中央に立ち、あの耳に残るベースリフを弾き始めると、「待ってました!」と言わんばかりにオーディエンスの熱がさらに一段階上がった。「tape」の後なので緩急の差がつき、より一層グルービーさが際立つ。このベースリフは、Instagramのリールで海外を中心に流行したことでも話題になったが、やはり生で聴くとその魅力は倍増する。

感情の機微を歌い上げる「TIME」

個人的にイチオシの「TIME」では、Asakuraの歌唱力の真価が発揮された。ヴァースでは内なる感情を絞り出すかのように歌い、サビで溜め込んだものを一気に吐き出す。特に「重なる景色」の「か」の母音「あ」に全ての思いを乗せているように聴こえるその瞬間、霞がかっていた目の前がパッと開け、自由に動き出すような感覚を覚えた。オーディエンスも一斉に腕を振り上げ、会場全体が一つの大きなうねりとなった。

MCで垣間見える人間味

楽曲の合間のMCでも、メンバーの人間味あふれる一面が楽しめた。最初のMCでは「北海道と言えば?」の質問に、メンバーがせーので一斉に回答するという企画が行われた。
Lenon「海鮮」
Kenichi「北海道日本ハムファイターズ」
Asakura「大きい」
takachi「大きい」
Asakuraとtakachiが揃って「大きい」と答えて会場を沸かせたのは予想外の展開だった。まさか「大きい」で被るとは誰も思っていなかったので、会場では大きな笑いが起きた。

そして意外だったのがLenonの過去。彼が回らない寿司屋でバイトしていたという経歴が明かされると、会場はどよめいた。そのLenonが「海鮮」と答え、北海道の海鮮の美味しさにお墨付きを与えたのだから、その信憑性は高い。道民は「海鮮がうまい」と言われると嬉しくなる習性がある笑

一方、Kenichiは現在首位を走る「北海道日本ハムファイターズ」について熱く語りたかったようだが、残念ながら他のメンバーも観客も野球には興味を示さず…この微妙な空気感も含めて、MCの魅力だった。

ワードセンスとダンサブルなグルーブ

自然と体が揺れる心地よいリズム

「ブルーライト」では、厚みのあるベースとギターのリズミカルなカッティングが心地よくリズムを刻み、自然と体が揺れてしまう。今回のセットリストの中では個人的に一番印象的な歌詞だった「拍、小節、全部バラして時代を壊していって」というフレーズに、Asakuraのワードセンスの高さを改めて実感させられた。

「Teardrop In The Sea」を経て、「cheers」では自然と体がノってくるダンサブルな楽曲が展開された。ギターリフも激しくかっこいいし、昔流行ったトランスっぽさもあり、目をつむりながらリズムに身を任せて聴きたくなる楽曲だ。

Asakuraの巧妙な煽りテクニック

「中盤戦に入りました札幌の皆さん!イケてますかっ!」
「イエーーー!」
「いいですね、でも、もっと声が聞きたい!イケてますかっ!」
「イエーーー!!」
「サビで手を振れる曲を持ってきましたので、皆さん一緒に手を振ってくださーい!では次の曲聴いてください!feelin'!!」

このAsakuraの煽りで始まった「feelin'」では、これまで続いたミディアムテンポの曲と打って変わって軽快なリズム。オーディエンスと共にサビのyeah yeah yeahで会場内に声が鳴り響いた。
そしてその勢いのまま「nevermind」へ!盛り上がりMAX間違いなしの人気曲で、オーディエンスの熱量も最高潮に達した。「答えのないエッセイ 隠れたSOS 不意に響くメッセ」のコール&レスポンスは楽しくて仕方がない。この瞬間、会場の全員が一つになっているのを肌で感じることができた。

軍隊スキーとかりんとう饅頭の意外な告白

「nevermind」が楽しすぎてと連呼するKenichiが息を切らせながら話し出すMCでは、メンバーから北海道エピソードを聞き出す時間となった。
Asakuraからは、かりんとう饅頭の話。「かりんとうは苦手だけど、北海道のかりんとう饅頭は大好き」という意外な告白に、会場からは親近感のこもった笑いが漏れた。

Lenonは修学旅行で北海道を訪れた経験を語った。3泊4日ですべてスキー、山の麓に宿がありゲレンデと宿との往復、そしてひたすら滑るだけのまるで軍隊のようだったというエピソードが大いにウケた。最初の日は楽しかったが、二日目からは筋肉痛で苦い思い出となったものの、料理が美味しくて結果的に楽しい思い出になったという。

takachiはmuqueに入って初めて北海道に来ることができたそうで、「雪風」の味噌ラーメンの美味しさに感動していた。Kenichiはメンバーの中では一番多く北海道に来ていて、今回で5回目。九州の寒さとは質が違うことや、肌の白い人が多いといった率直な感想からは、ツアーを回る中で感じる地域性への新鮮な驚きが伝わってきた。

技術力を見せつけたInterval、そしてフィナーレへ

バリバリロック→疾走感→職人技のソロパート

「"Later" -Rock ver.-」では、Rock ver.というだけあって冒頭からバリバリのロックサウンドで聴かせた。普段のmuqueとは違う一面を見せる楽曲選択は、バンドの幅広い表現力を証明していた。続く「Dear,my friends」の疾走感も相まって、ライブの展開に緩急をつける効果的な構成だった。

特に注目すべきは、Intervalでのインストゥルメンタル演奏。Asakura抜きでの3人の演奏では、それぞれのソロパートで見せ場を作り、普段は楽曲の中に溶け込んでいる技術力の高さを改めて見せつけた。シンプルにかっこいいと思わせる演奏技術は、バンドとしての底力を物語っていた。

怒涛のクライマックス

「北海道の皆さん!次の曲飛べますかっ!」
「イェーイ!」
「もっと出せるか北海道!イケますかっ!!」
「イェーイ!!」

Asakuraの煽りから始まった「Bite you」では、オーディエンス全員による「Bite you」のシンガロングの大合唱が巻き起こった。Asakuraに煽られて会場内が熱気で包まれ、この日の盛り上がりは間違いなくピークに達していた。

そして「The 1」——ONE PIECEのエンディングテーマに採用されたこの楽曲は、まさにライブのクライマックスにふさわしい選曲だった。疾走感のある楽曲が大海原を想起させ、アニメとの親和性の高さを改めて実感させる。「さぁ退いて!」のタイミングもピッタリで、観客も腕を振りまくり、会場のボルテージは限界を超えた。

続く「カーニバル」では、会場内の熱気がムンムンになる中、muqueはまだまだ盛り上げてくる。手を振りかざし、声を上げ、会場全体が一つとなる。muqueのメンバーもオーディエンスの熱量に刺激され、演奏の激しさを増していく相乗効果が生まれていた。

激しさから一転、心に響くラスト

Asakuraが静かにエレキギターを担ぐ…

「本日はありがとうございました。ラスト一曲聴いてください。DAYS。」

ラストの「DAYS」では、Asakuraが一人ひとりに語りかけるようなヴァースでオーディエンスを惹き込んだ。さっきまでの激しい盛り上がりとは打って変わって、グッと心に響く楽曲で締めくくる演出は見事だった。

聴く人に寄り添う楽曲

アンコールで選ばれたのは「pas seul」。激しく終わると思いきや、聴く人に寄り添う楽曲をチョイスしたのは、いかにもmuqueらしい選択だった。ライブが終わればまたいつもの日常が始まる——その現実を受け入れながらも、少しでも和らげ、またどこかで会いましょうというメッセージが込められているようだった。

期待される今後の展開


Photo : Tadaki Ryuto

takachiが生み出す楽曲は常にトレンドを意識し、ジャンルに囚われない「これいいじゃん!」という要素がふんだんに盛り込まれている。この姿勢こそが、国内のみならず海外のリスナーにも刺さる要因だろう。実際、「my crush」がInstagramのリールで海外を中心にバズり、そしてSpotifyリスナーの40%が海外という数字が示すように、彼らの音楽は国境を越える普遍性を持っている。

これは偶然ではない。takachiのUS、UKに留まらず、ASIANグローバルビートを含むワールドワイドな音楽への造詣と、Asakuraの抒情的な詩世界とどこか和を漂わせるメロディーラインが組み合わさることで、日本的でありながらグローバルに通用するサウンドが生まれているのだ。
日本よりも海外でのリスナーに刺さりやすいのではないか——今回のライブを観ながら、そんな確信を深めた。彼らの音楽は聴いていて心地よく、耳触りがいい。グルーブ感たっぷりでありながら決してうるさくなく、そこにAsakuraの柔らかい響きを持った声が乗ることで、その心地よさが完成している。

新曲が出るたびにワクワクする。次はどんな風に心地よくさせてくれるのだろうか、楽しませてくれるのだろうかと。この期待感こそが、muqueの最大の魅力なのかもしれない。

次はRSR2025 in EZO、さらなる飛躍への期待

次に北海道でmuqueの生音を聴けるのは8月15日のRISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO(def garageステージ、19:10〜)。フェスという舞台で、より多くの新しいオーディエンスと出会う彼らがどんな化学反応を見せてくれるのか、今から楽しみでならない。

札幌で確実にファンベースを拡大したmuque。彼らの「無垢」な音楽が、これからも多くの人の心に響き続けることは間違いない。

動画メッセージ

muqueのメンバーからライブ後の貴重な動画メッセージをいただきました!

MUQUE TOUR 2025 "RIDE ON!" セットリスト

Intro (Ghost takachi remix)
1. Ghost
2. 456
3. tape
4. my crush
5. TIME
- MC -
6. ブルーライト
7. Teardrop In The Sea
8. cheers
9. feelin'
10. nevermind
- MC -
11. "Later" -Rock ver.-
12. Dear,my friends
- Inter -
13. Bite you
14. The 1
15. カーニバル
16. DAYS
EC. pas seul

プロフィール

muque

muque

Lenon(Ba)、takachi(Track make&Dr)、Asakura(Vo&Gt)、Kenichi(Gt)による福岡在住の4ピースバンド。2022年5月結成。
muqueの楽曲はドラマーでありながらトラックメイク/アレンジを手がけるtakachiとトップライン/作詞を担当するAsakuraを中心として制作される。
US、UKに留まらず、ASIANグローバルビート含むワールドワイドな音楽を好むtakachiの同時代性の高いトラック、Asakuraが紡ぐ抒情的な詞世界とどこか和を漂わせるメロディーラインがその最大の魅力。そんな楽曲がAsakuraによるエモーショナルなヴォーカリゼーションにより独特の世界観を作り出す。
バンド名のmuqueは、フランス語で音楽という意味の「musique」と日本語の「無垢」という言葉をかけたもの。無垢は穢(けが)れのないという意味で、穢れのない音楽(muque)=周りに影響されず、自分たちのやりたい音楽を作り続けたい、という思いが込められている。


この記事を書いたモウラー

編集部

ニャかむら

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アニメが好きで、年間50作品ほど観てます。