
提供:札幌市
【開催レポート】「未来の札幌を知る!よくわかるGXセミナー~GX・AI・金融編~」を開催しました
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札幌市は今年度、Team Sapporo-Hokkaidoの協力のもと、高校・大学生から30歳代の若年層を対象に「GX・金融」に関する理解促進を図るためのセミナーを2回開催しました。
その2回目が「未来の札幌を知る!よくわかるGXセミナー~GX・AI・金融編~」と題して、2026年1月24日(土)、札幌市豊平区にある大和ハウス プレミストドームの西棟会議室を会場に、150人の来場者、オンライン配信で370人以上が参加する中、開催されました。
今回のセミナーは、カーボンニュートラルからサステナブル投資など、変化の時代における金融の役割を多角的に解き明かし、地域・企業・個人が未来へシフトするためのヒントを共有する4部構成で展開。スペシャルゲストの落合陽一氏をはじめ、各セッションの専門家・有識者が登壇し、「GX・AI・金融」の新たな可能性と同分野における北海道・札幌の高いポテンシャルが示された内容でした。
セミナー参加者から「北海道の明るい未来の展望を聞くことができ良かった」「札幌が進めるGXについてもっと情報を収集したいと思った」などの声も聞こえ、北海道の未来に希望が沸く楽しい内容のセミナーになりました。
※この記事では、セミナー内容を抜粋した開催レポートをお届けします!
セミナーの開催概要はこちらをご参照ください。
■オープニング「GXとは?」
山中 康裕 氏:
今回のテーマであるGXはデジタルトランスフォーメーションDXと兄弟関係かなと思います。GX、グリーントランスフォーメーションを簡単にいうと、現在のエネルギー環境をクリーンエネルギーが中心になるよう移行させ、経済社会システム全体を変革するというものです。
トランスフォーメーションをXで省略する表記は日本独自の発想のようです。国際的にはデジタルトランスフォーメーションDTというのが正しい言い方です。さらにですね、GX・グリーントランスフォーメーションは日本でしか使われてない和製英語です。ただ、この和製英語がダメとは言いません。たとえば絵文字とか和食とか、そういう言葉が英語になったように、ぜひとも頑張って我々がこれを世界の言葉にしていきたいですね。
北海道の電力をどう賄っていくかということで容量的には、もう再生可能エネルギー100%までいけるはずだと思いつつ、実は効率があるからちょっと難しい。このような状況の中、洋上風力が始まります。北海道の5カ所で計画されています。
再生可能エネルギーは実は40%を越えています。日本全体でいうとこの水準は2040年までに目指すところなのですが、北海道はもうすでに満たしています。
次の社会を作るためには責任ある会話と役割分担が必要です。CO2を出さない脱炭素社会に変えなきゃいけません。その時に役割分担が必要であり、国は国策エネルギーとして新しい産業の技術開発を担う必要があります。
北海道に住む私たちは、一人ひとり賢いユーザーとして、日々の暮らしを守ることが大切です。これは単にCO2を減らすだけではなく、エネルギーは海外からたくさん入ってきますが、海外で戦争が起こったり、大変なことが起こり地政学的リスクが負われると、エネルギーが使えなくなるということも考えなければいけない。
立場、年齢、性別を越えた対話と合意形成をし、民主主義を進めて、責任あるエネルギー対策とともにGXを進めていきましょう。
■セッション-1「AIデジタル、脱炭素、これからの経済社会」~2050年以降を見据えて~
落合 陽一 氏:
今日のテーマをいろいろ考えていたのですが、真面目に話すと、食が重要でエネルギーが重要で、空間が重要ですといった話や、200万都市でどうやってエネルギーと交通をはじめとするさまざまな課題を考えていくべきか、あるいは一次産業をどうするかといった内容になるかと思います。ただ、それだけではあまり面白くなさそうなので、とりあえずそうした話は最後にまとめます。
皆さん、日本語において最も古くから使われている漢語のひとつは何だと思いますか。そのひとつが「自然」です。グリーントランスフォーメーション(GX)と言ったときの「自然」とは、一体何なのでしょうか。
一般的に西洋的な考え方では、「自然(nature)」があり、人工物があり、その間に人間がいて、さらにその上位に超自然的な存在――神のようなものがある、という階層的な世界観になります。一方、東洋的な世界観では、世界全体がまず「自然」として存在し、自然の中に超自然的なものや神々が内在していて、そこに人間がおり、人工物もまた自然の一部として位置づけられます。
ちなみに私は「デジタルネイチャー」という概念を研究しているのですが、東洋的な世界観の側から考えてきた人間なので、デジタルネイチャーとは、人間と超自然と人工物を含んだ、より広い意味での自然のことを指すと考えています。
さて、ここからもう少し本題に入っていきます。AIがこれだけ普及してくると、人間がひとつひとつパラメータを調整しなくても、AIに説明すればAIが自動的に作ってくれるようになります。動くシステムをとりあえず構築するということ自体は、格段に容易になってきました。だからこそ、実際に自分の手を動かしたり、現場に足を運んだり、自分が本当に興味関心のある問題に正面からぶつかっていくことが、ますます大切になってきます。
今、地球はほぼコンピューターの星になりつつあるのではないかと思うわけです。
そうなってくると、GXというテーマはあらゆることに関わってきます。どこまでが自然で、何が自然ではないのか。どの自然を、どのような観点で保全していくのか。それはエネルギーの問題なのか、経済の問題なのか、それともAIとコンピューターの問題なのか。さまざまな要素が複雑に絡み合うことになります。
人類のイノベーション速度は急激に加速しています。これからはAIが論文を執筆したり、自動的にものづくりを行ったりするようになれば、この速度はさらに上がっていくでしょう。そうなったときにボトルネックになるのは何か。エネルギーは確実にボトルネックになります。
AIバブルは弾けるのかという問いに対しては何とも言えません。ただし、仮にAIバブルが弾けたとしても、私たちの手元には十分に優秀なAIモデルが残ります。事実、同等の知的タスクを処理するためのコストは急速に低下しており、条件によっては年間で数百倍規模のペースで安くなっています。一方で、その裏側ではAIを駆動するデータセンターや、それを支える土地・エネルギーの需要が急増しており、供給が追いついていません。
エネルギーの問題をしっかり押さえた上で、空間にデータセンターがあるというインフラの現実を踏まえて、その基盤の上に良いものを考えていく。これはまさに今、取り組まなければならないことであり、非常に重要なテーマです。
■セッション-2「GX金融の未来」
進行補助 :落合 陽一 氏(メディアアーティスト)
石井 孝典 氏:
金融という言葉が入っているわけですが、モノではないので、分かりづらい部分は多いと思うんですよね。この金融はそもそも何なのですかっていうことで、それをGXに絡めてお話をできればと思っています。
金融機関の役割は経済社会が滞りなくスムーズに動くようにお金を流すっていう役割を持っています。お金が余っているところから足りないところにお金を流しているということに言い換えることができますね。
脱炭素社会を目指すために、日本政府は今後10年間で官民あわせていくらの脱炭素投資の実現を目指しているでしょうか?答えは150兆円です。
北海道、札幌ってどういう状況か皆さん知ってますか。もうすでに8つのGXプロジェクトが動き出しています。ラピダスの話、データセンターの話、こういう投資が非常に活発になってきています。それからもう一つ、北海道が全国一の再エネポテンシャルを持っているということが、国家戦略と合致する投資先として優位な要素となっています。
北海道・札幌は、『GX/AI金融・資産運用特区』に国から指定されているのです。日本の四地域(東京・大阪・福岡・札幌)の中でGXっていうワードが入っているのは北海道・札幌だけなんです。
本日のメッセージは3つですね。金融機関の役割は余っているところから足りないところにお金を流すこと。金融機関にとって流す先を目利きする力が必要。お金を流す先としての北海道・札幌のポテンシャルの高いところ。この3つを今日のメッセージとしてお伝えしました。
GXを達成するためには、産業界からアカデミア、政府、そして金融機関、これがしっかりコラボレートする必要があると考えています。
■セッション-3「GX・金融で描く北海道・札幌の未来地図」~トークセッション~
パネリスト:落合 陽一 氏(メディアアーティスト)
山中 康裕 氏(北海道大学大学院地球環境科学研究院教授)
石井 孝典 氏(三菱UFJ信託銀行サステナブルインベストメント部上級調査役)
鈴木 徹 氏(北海道新聞社 編集局特別編集委員兼解説委員)
菅井:本日最後のプログラムになりますが、GX・金融をもう少し深掘りして、これからの北海道・札幌の未来を考えていく機会にしていきたいと思います。まず、ここからご登壇いただきます北海道新聞社の鈴木透さん、今後の展望などもお話いただけますでしょうか。
鈴木:経済記者として30年も前から「北海道経済には大きな可能性がある」と唱えてきました。ところが、いつまで待っても鳴かず飛ばずで、なかなか芽が出ない。ここ数年で、ようやく「これは本物だ」と言える動きが出てきました。もともと北海道の基幹産業である農水産業と観光産業に加え、ラピダスに代表される半導体産業が動き出し、今回のテーマでもある再生可能エネルギーなどGX関連の新産業が盛り上がってきた。食と観光、半導体、GXという「4本の矢」がそろい、これらの事業に必要な投資資金を世界中から集める「GX、AI金融・資産運用特区」にも指定された。願ってもないビッグウエーブだと思います。
少し心配なのは、「外資を呼び込む」ことに反対する人、外国資本が不動産を買って再エネ事業をやることに不信感を持つ人が増えていることですね。誤解しないでいただきたいのは、国籍が外国人か日本人か、という単純な問題ではないということです。土地利用に関していえば、国内企業が自然を破壊してきた例は、いくらでも挙げられます。問題の本質は、土地の実質的な所有者がわかりにくく、不適切な利用を初めてもなかなか止められない、日本の土地管理制度の不備にあります。環境を守り、もっと良くしていく企業であれば、国内外を問わず、来てもらった方が良い。そのためにも「さすが札幌だ、北海道だ」と感心してもらえるような、環境に優しいまちづくりを進める必要がありますね。
菅井:ありがとうございます。人口減少、環境課題が増え続けている現代において、GXはどのように人の労働、暮らしに影響を与えるでしょうか、山中先生からお答えいただけますか。
山中:北海道はいろいろな地域があり、同じではないんですね。GXに関しては道央圏がやはり有利。石狩の洋上風力、苫小牧の水素、CCSなど、国の政策として動いているところに札幌市が加わる。
GXとAIって諸刃の剣なんですよ。積極的に投資を呼び込み魅力ある地域にもできるけれども、外から企業が来て、なんかやってるな、と流されてしまいます。だからこそ、良い企業、悪い企業を見極めるとか、積極的にGXで何が起こるかを勉強するのがいいと思います。
菅井:ありがとうございます。知ることっていうのも大事なことですよね。AIの利活用、そして日常を豊かにするために意識することなども含め、落合さんはいかかですか。
落合:人口減少をどう見るかは、移民と省人化と人口の軟着陸とテクノロジーの発展、この四つぐらいのパラメーターで見ています。いつになるのか、2030年なのか、2035年なのか、2040年なのかによって処方箋が変わります。
最先端のモデルは、もうスマホで使えます。金融とか統計的なデータを見るのも得意になってきているので、分析させるのもいい。食べたものを写真撮って渡すと、カロリーとか体の状態とか、AIの方が詳しいっていう状況になる。皆さんもすぐ明日からできます。
菅井:ありがとうございます。石井さんはいかがでしょうか。
石井:GXっていうと大層に感じるかもしれないけど、もっと簡単に考えれば、エネルギーを有効活用することを一市民として意識するのが大事だと思っています。請求書を紙じゃなくメールにするだけで使用量が見えてポイントがついて、決済に使えたり投資にも回せたりする。デジタル技術と金融とGXが身近なところで結びついている例だと思います。
一昨年ですかね、札幌市さんが主催で、GXセミナーが開催されていて出席したんですけれども、そこでデンマークの政府高官の方がいらっしゃっていましたが、北海道と組む、投資する目線で見ていいました。シンガポールでも観光や食ではなくGXの文脈で北海道という言葉が出てきたのが印象的でした。
菅井:それぞれのお立場から発言をいただき、ありがとうございました。落合さん、最後に全体のセミナーを通じていかがでしたでしょうか。
落合:ここ30年、日本は経済成長が止まっていたと言われますよね。私自身、産業政策に関わる立場でも長く議論してきましたが、昔と同じやり方では、もうなかなか利益が出せなくなっているというのは、はっきりしていると思います。
その中で、この国をどうソフトランディングさせるのか。交易条件が悪化している中でも、まだ価値を生み出せるものは何なのかを考えないといけません。ソフトウェアやAI、観光や文化、もともとあるものをどう生かして付加価値に変えていくのか、そこが重要になってきます。
そう考えると、北海道でGXを進めるというのは、すごく理にかなっていると思っています。
環境負荷を抑えながらエネルギーを確保できる場所でなければ、そもそも次の時代のインフラは成り立ちませんし、自然を守ること自体が価値になる時代です。
北海道は、自然があり、食があり、住環境もいい。人が集まり、考え、何かを生み出していくポテンシャルがある場所だと思います。
今日の話は、正解を持ち帰ってもらうというより、『あ、こういう見方もあるんだな』とか、『もう少し調べてみようかな』とか、そんな一歩につながれば十分だと思っています。
興味を持った方は、ぜひAIに聞いてみたり、いろいろな情報を見てみてください。考えるきっかけになっていたら、今日はそれでよかったんじゃないかなと思います。

