【北海道・下川町】森と共に生きる町を巡る|五味温泉・万里長城・サンルダム

【北海道・下川町】森と共に生きる町を巡る|五味温泉・万里長城・サンルダム

北海道には179の市町村があります。しかも、北海道はとにかく広い。札幌からちょっと出かけようと思っただけなのに、気がつけば「片道3時間」といったことも珍しくありません。目的地が決まっていると、途中にある町はどうしても通り過ぎてしまう。「いつか行ってみたい」と思いながら、何年も通過してきた町が、私にはいくつもあります。

その一つが、道北の下川町でした。そんな下川町の温泉宿に、ある日、ぽっかり空いた空室を発見。「これはもう行くしかない!」というわけで、初めて下川町を訪れてみることにしました。

下川町ってどんな町?


下川町は、道北の名寄市から東へ20㎞ほどの場所にあります。町の面積約644平方㎞のうち、9割ほどを森林が占める、まさに「森の町」です。基幹産業は農林業。中でも林業では、植えて、育てて、伐採し、また植えるサイクルを計画的に繰り返し、持続可能な木材生産を行う「循環型森林経営」に長年取り組んできました。

育てた木を木質バイオマスとしてエネルギーにも利用しています。森を出発点に、産業やエネルギー、暮らしまでをつなげているのが、下川町の大きな特徴です。
実際、下川町は、国から2008年に「環境モデル都市」、2011年に「環境未来都市」、2018年には「SDGs未来都市」に選定されています。2017年には「第1回 ジャパンSDGsアワード」の内閣総理大臣賞も受賞しています。

・・・と、いきなり難しい話になりましたが、私が下川町を知ったきっかけは、もっとずっと身近なものでした。

はじまりは、1冊のエッセイ漫画


私が下川町を知ったのは、漫画家・はた万次郎さんのエッセイ漫画『ウッシーとの日々』でした。はたさんは東京から下川町に移住。漫画には、町で借りた古民家で牛のような模様の犬・ウッシーと暮らす様子が描かれています。

釣りをしたり、スキーをしたり、山を歩いたり、温泉に入ったり、山菜を採ったりといった日々の暮らしと共に、北海道の冬の厳しさも描かれています。でも、その厳しさを含め、その暮らしが何だかとても楽しそうでした。

「どんなところなんだろう」。最初の興味が生まれました。

何度も聞こえてくる「下川商業高校」


続いて、下川町を意識したのが、2月に札幌の大倉山で行われた「雪印メグミルク杯ジャンプ大会」を見に行ったときのこと。ジャンプ前には、選手の名前と所属がアナウンスされます。「○○○○選手、下川商業高校――」。何度か聞くうち、スキージャンプの選手には下川町出身者が多いと聞いたことがあったのを思い出します。

実際、この大会でも現役選手として競技に挑んでいた“レジェンド”葛西紀明選手をはじめ、岡部孝信選手、伊藤大貴選手など、世界で活躍してきたジャンパーを数多く輩出しています。そしてミラノ・コルティナ2026冬季五輪では、下川商業高校出身の二階堂蓮選手と伊藤有希選手が日本代表で出場しました。

「さすが森林の町!」と思った、木の名刺

そして、私にはもう一つ、下川町のちょっとした思い出があります。
2008年、「環境モデル都市」に下川町が選定されたころ、仕事の関係で当時の安斎保町長と名刺交換をする機会がありました。そのときの名刺が、薄くスライスされた木そのものだったのです。「さすが森林の町!」と思ったことを、今でも覚えています。

余談ですが、大学時代にはゼミで下川町をフィールドワークの対象にしていた学生がいました。新卒で入った会社の同僚にも下川町出身者がいました。思い返してみると、私はこれまで何度も、何らかの機会に「下川町」に出会っていたのです。なのに、一度も行ったことがない・・・。これはもう行ってみるしかありません!

まずは五味温泉へ!森の中にたたずむ宿

札幌を昼前に出発し、道央自動車道を北へ。士別剣淵ICで高速を降りて、「道の駅 羊のまち侍・しべつ」に寄り、士別市内のつくも水郷公園で少し遊んでから、いよいよ下川町に向かいます。

今回の宿泊先は、五味(ごみ)温泉。はたさんの漫画にも登場する温泉です。「ゴミ?何でゴミ?汚くないの?」息子が問いかけてきます。息子よ、ゴミではありません。五味です。



そんなやり取りをしながら向かっていると、途中に下川町のカントリーサインを発見!描かれているのは、町の名所「万里長城」とふるさと交流館のシンボルタワーです。

「今まさに下川町に足を踏み入れた!」と、ちょっとした達成感。両サイドを木々に囲まれて進む道路にも、“下川町に来たぞ感”を感じられます。


しばらく道を進むと、五味温泉が現れました。木の温もりを感じさせる外観です。


館内も木がふんだんに使われていて、エントランスは吹き抜けの開放感。山の中の温泉宿らしい、落ち着いた雰囲気です。

森の恵みを温泉の熱源に


五味温泉の木質バイオマスエネルギー設備

温泉の特徴は、国内でも珍しい、炭酸ガスを含む炭酸水素塩泉です。神経症、皮膚病に有効で「美人の湯」としても親しまれているそうです。実際に入ってみると、「熱い」という感じはなく、入っているうち体がじんわり温まってくる感じ。森の中という環境も心地よく、のんびり浸かれる温泉でした。何もせず、ただただボーっとする。ものすごく贅沢な時間です。

そして、ここでも下川町らしさを発見!五味温泉では、木質バイオマスを燃料とするボイラーを導入し、温泉の加温や施設の暖房などに利用しています。もともとは重油ボイラーを使っていましたが、その一部を木質バイオマスボイラーに置き換えることで、地域の森林資源をエネルギーとして活用しています。森で育った木が、こうして温泉の熱源になる。下川町が掲げる「循環型森林経営」が身をもって感じられました。

少量多品種のおかずがうれしい夕食


夕飯は、館内のお食事処でいただきました。ビュッフェも楽しいですが、いろいろなおかずがちょっとずつ食べられる定食が最近は妙にうれしい。・・・年齢でしょうか。

刺身、鶏肉のバジル焼き、冷ややっこ、チキンナゲット、小エビの唐揚げ、そして陶板焼きの中は、魚(たぶんサクラマス?)のちゃんちゃん焼きでした。こういう時、なぜか息子が普段食べないおかずもバクバク食べる。不思議です。まさに、旅行マジック!強すぎる!


五味温泉

住所
上川郡下川町班渓2893番地
電話番号
01655-4-3311
営業時間
10:00~21:30(受付終了20:30まで)
備考
日帰り入浴 大人:500円 小人:300円(5歳~小学生)

15万個以上の石を積み上げてつくった「万里長城」

翌朝、五味温泉を後にして、桜ヶ丘公園に向かいました。


ここには、下川町を代表する観光スポットの一つ、「万里長城」があります。中国の万里の長城を思わせる石積みですが、こちらは町民をはじめ、各地の人々が一つひとつ石を積み上げてつくった、下川町のオリジナル長城です。

きっかけは、役場職員が中国旅行で万里の長城を訪れ、手づくり石積みのアイデアを得たことから。1986年からつくり始め、15年がかりで2000年に完成しました。使われている石は、15万個以上にものぼるそう。


せっかくなので歩いてみることに。すると、石に名前や日付、地名、メッセージが刻まれているのに気づきます。町内だけではありません。北海道内はもとより日本各地の地名があります。
遠目に見るとただの石積みですが、一つ一つに「私はここに来ました」「ここを一緒に作りました」という痕跡が残っている。そう思って見ると、石の一個一個に人生があるようで、急に感慨深くなりました。


公園内にある「ふるさと交流館」


こうして、しばらく歩きましたが、なかなかゴールが見えません。そもそもどこがゴールなのか・・・。普段のほとんど運動していない身としては、だんだん不安に駆られてきます。途中でやめたいのですが、道の切れ目がなかなかありません。


それでも何とか切れ目を見つけて、ウォーキング終了。公園をぐるりと回りながら、ざっくり半分ぐらい歩いたと思われます。全長約2㎞なので、1㎞ほどでしょうか。万里長城、なかなか侮れません!

子どもは大喜び!木の遊具で遊べるアスレチック広場


そして、息子にとってはこれからが本番。桜ヶ丘公園にはアスレチック広場があり、木を使った遊具が並んでいます。中でも、写真奥に見える木組みのアスレチックはなかなか複雑な造り。ちょっとした迷路のようになっていて、子どもはこういうものを見つけると、急に元気になります。さっきまで「もう歩けない」と言っていたのは誰でしょう・・・。




木で作られたオブジェもあちこちにあり、公園全体がちょっとしたメルヘンな雰囲気。しかも、この日はたまたまなのか、ほかに人の姿がありません。ひろーい公園をほぼ貸し切り。旅先のこんな時間も楽しいものです。


万里長城・桜ヶ丘公園

住所
上川郡下川町西町1026番地
電話番号
01655-4-2072

サンルダムへ!幻想的な湖面に立つ木々

桜ヶ丘公園を後にして、今度は町の北に向かいます。山道をどんどん進んでいくと、右手にサンルダムが見えてきました。サンルダムは、洪水被害の軽減、農業用水・水道用水の確保、水力発電といった複数の役割を担っています。でも、今回のお目当ては、やっぱり景色です。

一度、サンルダム管理支所を通り過ぎ、さらに奥へ。珊瑠(さんる)大橋から眺めてみました。


湖面からか細い木々がすっと立っている様子が何とも幻想的。さらに、かつてこの場所にあった橋も姿を見せていました。


しばらく見ていられそうでしたが、「ヒグマが出ないかな」という現実的な不安が頭をよぎります。絶景とヒグマ。北海道の自然は大体この2つがセットです。


というわけで、ほどほどのところでサンルダム管理支所に戻ることにしました。


発電所カードもゲット!

サンルダム管理支所では、1人1枚、ダムカードをいただきました。


悠々と水をたたえる様子も、また絶景です。


サンルダム管理支所

住所
上川郡下川町珊瑠1595番地
電話番号
01655-4-3921
備考
ダムカード配布時間 9:00~17:00(土・日・祝日を含む)

今回の訪問では、実は町内グルメをあまり味わえていません。名物のしもかわうどんを食べてみたかった。観光協会のサイトにもおいしそうな店がたくさん載っています。つまり、もう一度行く理由がしっかりと残っているということですね。

北海道はとても広く、行きたい場所は山ほどある。だからこそ、目的地だけを目指すと、その途中の町はどんどん通り過ぎてしまいます。でも、今回のようにちょっと寄り道してみると、そこには知らなかった景色があり、思いがけない歴史があり、子どもが夢中になる遊具がありました。
まだまだ行ったことのない町だらけ。さて、次はどこへ行こう。


この記事を書いたモウラー

モウラー

えぞかんぞう

岡山出身の旅好き人間です。コロナ渦を機に2021年、東京から札幌に家族(夫、息子)とともに移住。鉄道好き遺伝子を受け継いだ息子とともに、道内の鉄道スポットを巡っています。