【RSR2024レポ】今年はどんな「原石」に出会えたのか?新人バンドの登竜門「Rising Star」を楽しんできた!
日本最大級のオールナイト音楽イベント「ライジングサン・ロック・フェスティバル2024(RSR)」が8/16,17の両日、石狩湾新港の特設会場で開かれました。
Moula Hokkaido編集部ではこれまで、RSRの出場権を懸けた新人発掘オーディション「Rising Star」を密着取材し、応募アーティストの奮闘を追いかけてきました。
そして迎えたRSR本番!417組の応募を勝ち抜いたバンド2組が、どんな熱い演奏を見せてくれたのか。音楽好き編集部員による「超主観的」なレポートでお届けします。
【Hwyl】「裸の言葉」で叫び歌った 「庶民代表ロックスター」
1日目の午後1時。SUN STAGEなど他の大型ステージに先駆け、野外の小型ステージ「def garage」が開演した。「RSR2024のトップバッター」として舞台に立ったのは、Rising Starの勝者「Hwyl(ヒュイル)」だ。ROCK IN JAPAN2023のオープニングアクトを務め、テレビやラジオでの露出も増えているスリーピースバンドだ。
「はじめようぜー!」。ボーカルのあきたりさの元気な呼び声で1曲目の「近年、平和な日々が続いたせいで」が始まる。オーディエンスは、若者からRSRのベテラン勢まで幅広い年代の顔ぶれだ。音楽好きからの注目度の高さを感じる。
Hwylの最大の魅力は、あきたが紡ぐ歌詞の世界観だ。バンドのキャッチフレーズに「庶民代表」を掲げ、20代女子の等身大な日々を歌い上げる。とはいっても、キラキラと輝いた日常ではない。
お金も時間もない、恋愛もうまくいかない不甲斐なさ。己の夢と現実のギャップへのもどかしさ。心の奥底に積もり積もった思いが、あきたの歌と叫びに変わる。飾りのない「裸の言葉」が突き刺さる。
3曲目の「暮らし」、6曲目の「凡人」。いわば「庶民代表ロックスター」の歌声が本当に真っ直ぐ胸に響いてくる。何度Youtube で聞いてきていても、やっぱりライブに勝るものはない。RSRの舞台に立てた喜びと歌に込めたメッセージを、全身全霊で表現してくれているのが伝わってくる。
「台風来なくで本当に良がったー!最後まで目を離さないで」。あきたのMCには、出身地の津軽弁が端々にあらわれる。根っからのエゾロッカーとしては青森出身というだけで親近感を覚えてしまう。東京に染まんなよ!と。
わずか30分間のステージで、休む間もなく8曲を披露してくれたHwyl。オーディエンスの「ありがとう」の気持ちが、沢山の拍手と声援に変わっていった。
<セットリスト>
近年、平和な日々が続いたせいで
普通の顔
暮らし
Answer(新曲)
現在地
凡人
Treasure
さすらい
【Arata】札幌純正の「アーバンファンク」 聴衆を熱く踊らせた
2日目、関東沖に止まっていた台風7号は完全に東に逸れた。悪天候の不安から解放された石狩だが、厚い雲に覆われ、夏の蒸し暑さに包まれていた。
「Arataです、宜しく!」
颯爽と登場したのは札幌出身のスリーピースバンド Arata。昨年のRising Star 出演を勝ち取った札幌出身のバンド「First Love is Never Returned (FLiNR)」のギター山本新が2018年に結成した。山本はFLiNR, Arataで2年連続のRising Star出演となる。
ギターのカッティングで始まった1曲目の「眠れぬ夜」。生ぬるい空気を吹き飛ばすダンサブルなチューンに、会場の温度は一気に上がる。ベースラインが跳ね回る。自然と拳が上がり、拍手が起きる。縦に横にと体が揺れる。
FLiNRがアーバンポップを歌うなら、Arataが歌うのは「アーバンファンク」ではないか。北の大都市・札幌の街が持つ遊び心やオシャレさをファンキーに表現してくれる。RSRの舞台に本当にぴったりだ。
「踊っていきましょう!」。4曲目の「メトロポリス」、ドラムの水口航がラップを刻んだ5曲目の「anthem」にかけてオーディエンスの熱気は最高潮に。
Arataの良さは「ハーモニー」にあると思う。一本筋の通った力強い歌声のロックバンドも良いが、Arataの場合は声色が重なり合うことで楽曲の世界観がカラフルに広がる。ラスト7曲目の「The magical vacation」が印象に残った。
8/23にはミニアルバムの発売を記念したレコ発ライブを札幌VyPass.(札幌市中央区北4条西6丁目1-1 エターナルパンセB1)で行う。「FLiNRとのツーマンで行います!ぜひ聴きにきてください!」。心を掴まれたオーディエンスは多いに違いない。
<セットリスト>
眠れぬ夜
わがままなBoy
Life
メトロポリス
anthem
サニデイズ
The magical vacation
マユミさん頑張れ!ステージスタッフの挨拶に声援
1日目と2日目のライブ開始前には def garageを担当するウエス(RSR主催者)のマユミさんが挨拶のステージに立った。「皆さん、盛り上がる準備は出来ていますか!」。少しぎこちない呼び掛けに、緊張感が伝わってくる。
RSRには、SUN STAGEをはじめ1万人超を収容する大型会場もある。そのなかで、この小さな会場を任されるということは、ひょっとすると音楽イベンターとしてはまだ「駆け出し」なのかもしれない。マユミさん頑張れ!なんていう気持ちにもなる。
そう、RSRはアーティストだけが作っているものではなく、沢山のスタッフが汗水を流して作り上げているものだ。すべての人に感謝して、年に一度のこのお祭りを楽しめばいい!
Rising Star は新しい音楽との出会いを生む「最高の見本市」だ!
「ロックフェスティバルって音楽の見本市なんですよ」。その昔、知り合いの音楽プロモーターが教えてくれた言葉を思い出す。
よく知られた人気アーティストのライブを楽しむのも勿論良いのだけど、「見本市」のようにたくさんの未知の音楽に出会うことがロックフェスの「正しい楽しみ方」だと彼は教えてくれた。RSRで出会い、応援したいアーティストがあらわれたら、今度はライブにも通ってあげてほしいと。
その意味で「Rising Star」はロックフェスの王道のステージだと思う。出演するのは、オーディションを勝ち抜いたブレイク前のミュージシャン。「見本市」のごとく、新しい音楽との出会いを提供する場なのだ。
過去にはサカナクションも輩出したRising Star。HwylやArataのこの先の飛躍が本当に楽しみだし、来年はこの舞台でどんなバンドに出会えるのだろうか。この最高の「見本市」が今から楽しみで仕方ない!!