【vol.23】私は5年後に店を出す
Tangled
5年前(2019年4月)、私が担当しているラジオ番組「IMAREAL」に1通のメッセージが届いた。
「北星学園女子の英語劇をラジオで宣伝させてくれませんか!」という内容だった。
こういうメッセージが届くたびに、私は「いいぞ!」と思う。もしも「いいぞボタン」があったら連打している。
「やりたいと思ったことをできる人」
「やりたいと思ったことができない人」
「やりたいと思ったことはできない人」
「やりたいと思わない人」
いろんな種類の「やりたい人」がいる。私はどんな「やりたい人」も応援したい。特にやりたいという想いを伝えてくれた人の応援をしたい。
自分一人では出来ないから、あなたの力を貸してくださいと言える人の共通点は「提示したものへの自信」と「相談者への見返り」がはっきりしていること。
「僕、何も出来ないですし、助けてもいいことないんですけど応援してくれませんか?」と言われたらどうだろうか。まぁ、ここまでいくと笑っちゃうくらい振り切っているので、お金と心の富裕層は応援するかもしれませんね。
メッセージをくれた北星学園女子中学高等学校の宮出さんは、学校での恒例行事「英語劇」の広報担当だった。そしてラジオを聞いてくれているリスナーだった。ラジオリスナーにも自分たちの劇を見てほしいと言えるのは私たちに見に来て良かったという体験をさせる自信があるから。すぐに学校に連絡して取材をすることになった。
英語劇の演目は「塔の上のラプンツェル」。2010年に公開されたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品の50作目で、今年ディズニーシーの新エリアにも登場した人気作です。
この名作を高校生が全編英語で表現する。実はアメリカで公開された際の作品のタイトルは「Tangled」だったと知った。「結び目がもつれる/からんだ」という意味で、主人公のラプンツェルの長い髪を表現したものだった。髪だけでなく関わっていく人間ともつれ、そしてほどけていく。きっと演じた彼女らもこの作品を通していろんな想いが絡み、そしてほどけたのだと思う。
インタビューの中で印象に残っていた言葉がある。それが「いつか自分のお店を持つ」というメッセージをくれた宮出さんが「将来の目標」として掲げた言葉だ。スイーツ作りが大好きで、焼き菓子だけでなく、お店に並んでいるかのようなケーキの写真を何枚も見せてくれた。お菓子作りの話をしている時の彼女はずっと笑っていて、それが忘れられなかった。
spill the beans
2024年9月13日、IMAREALは放送700回を迎えることが出来た。この日の放送は「探せ!イマリアルリスナー!」と題し、過去に聞いてくれていたリスナーや学校訪問で出会った学生が、今、どこで何をしているのか?を調査するという内容になった。
このテーマが決まった時に、真っ先に浮かんできたのは宮出さんだった。進学先は聞いていなかったので「まだ学生かな?」とか、「どこかで修行しているかな?」と想像していた私は彼女に会いたくなった。
5年前、番組出演のお礼のメッセージをSNSのDMで貰っていたのを思い出し、何度もDM欄をスクロールしてアカウントを発見。投稿は2022年、お菓子の写真で止まっていた。私が彼女に「番組出演依頼」を送った数日後に返信が来た。
「実は9月に間借りですが、初めてお店を出す予定なんです!ぜひラジオ出させてください!」という返事が来て興奮した。ラジオをしていると、しばしば「こういうこと」が起きる。先月でも、来月でもなく、放送するその月に初めてお店を出すという奇跡!すぐにその日はやってきた。
生放送スタジオにやってきた宮出さんは、面影はありながらも髪を染め、大人の女性になっていた。変わっていなかったのはお菓子への想い。出演してもらった「もぐごく部」というコーナーは、新商品や話題の食べ物や飲み物を紹介するコーナーで、普段ゲストが出演することはない。彼女にはこのコーナーに出てほしかった。
番組史上初、リスナーの作ったお菓子を食べる。高校卒業後、製菓専門学校に入学、無事に卒業した後、いくつかのお店で修行させてもらっていたそうです。持ってきてくれたのは星型のミルククッキーとキノコの笠や帽子のように見える可愛いチョコクッキー。ほんのり甘いミルククッキーと、ほろ苦さの奥にある甘さが引き立つチョコクッキーはどちらも美味しかった。そしてコーヒーが飲みたくなった。何よりもこの時間が幸せだった。
彼女が出すお店の名前は「spill the beans」。直訳すると「豆をこぼす」という意味だが、「うっかり秘密をもらす」などの意訳もあるそうです。つい誰かに教えたくなる秘密のお店って素敵。この言葉も高校生の頃に学んだのかな?きっと私も「うっかり」周りの人にお店の紹介をするだろう。
まずは初出店だ。2024年9月30日(月)13時~21時に札幌市中央区北4条西14丁目にあるワインバー「INCOGNITO」で初めての間借り営業をするそうです!この記事を、営業前に読んでいるあなたは、ぜひ行ってください!私も行きます。
学校訪問をしていなければ彼女に出会うことはなかった。5年前に彼女がラジオから宣言した夢の第一歩が間もなく始まる。非効率の向こう側には美味しいお菓子が待っていた。
- 住所
- 札幌市中央区北4条西14丁目1−6
- 電話番号
- 070-8958-3570(営業時間内のみ)
- 営業時間
- 水木金土 19:00〜23:30 (LO23:00)
- 備考
- 「spill the beans」間借り営業日時
9月30日(月)13時~21時