【札幌】茶廊法邑で開催!孫田敏 個展「植物細事記 vol.3.5」鑑賞レポート

【札幌】茶廊法邑で開催!孫田敏 個展「植物細事記 vol.3.5」鑑賞レポート

Scanergrapher(スキャナーグラファー)という一般的にはちょっと耳慣れない肩書を持つアーティスト 孫田敏氏(以下、孫田氏)の個展が、札幌市東区のギャラリーカフェ「茶廊法邑」で開催されている。

孫田氏の作品のモチーフは我々の身近なところに生息する植物だ。スキャナーグラフの技法を活かした超高精細な大小20点の額装プリントがギャラリーの空間に整然と並べられている。ギャラリーを見渡すと、さながらアートの森を散策しているようだ。会期は7月2日まで。お早めに。

漆黒に浮かび上がる妖艶な美しさ スキャナーグラフ「植物細事記」とは

スキャナーグラフとは、端的に言うとフラットベッド・スキャナーを用いて立体物を読み込み、高精細な画像データを精製する技法のことである。孫田氏は2009年(55歳)から植物のスキャナーグラフに取り組んでいる。「身近な植物の細かなところ(細事)を植物暦(歳時)のようにまとめてみたい。」これが孫田作品の出発点であり、個展のタイトル「植物細事記」の由縁である。


孫田敏 個展 「植物細事記 vol.3.5」

額装されたプリント一点一点が放つ独特のシズル感、漆黒の背景に浮かび上がる植物の様々な表情(カタチと色彩)は妖艶と言えるほど生々しい。初見の人はその美しさにハッとさせられるだろう。それには長年に渡ってスキャナーグラフに取り組んできた孫田氏ならではの工夫がある。毎回、採取した植物がまだ瑞々しいうちに即座にスキャンしているのだそうだ。

被写体である植物に対する細やかな配慮や、一枚のフレームの中に緻密に計算された植物の配置、展示会場全体の構成などに孫田氏の誠実な人間性も垣間見られる。


まるでそこにあるかのようなリアルな描写のスキャナーグラフ作品

筋金入りの植物の専門家!"アートの森の冒険者"孫田敏氏の歩み

孫田氏は1977年に北海道大学農学部林学科を卒業し、その後は緑化会社に勤務して緑化工事や土木工事の現場監督に従事。1990年からは建設コンサルタントとして土木工事に付随する植樹のための調査、計画、設計を担当。

1999年には独立し、自社で建設コンサルタントをしながら森林ボランティアの育成や美専学園北海道芸術デザイン専門学校で植物学の非常勤講師も務め、現在に至っている。
筋金入りの植物の専門家であるのだが、その眼差しは少年のような探究心に満ち溢れている。まさに「アートの森の冒険者」であるかのようだ。


少年のような探究心で"植物の思わぬ顔"を発見する

「"植物の思わぬ顔"を発見するのはとても楽しくてワクワクします。今回の展示では敢えて桜などの私たちのごく身近な植物をモチーフにしました。中にはギョウジャニンニクのような道民の食材には欠かせない植物もあります。見慣れた植物でも季節や見る角度を変えて観察すると意外な表情を見せてくれるものです。植物を学ぶ学生たちには、分からなくてもいいから考えてみてねと激励しています。まずは興味を持っていただきたいですね。」


開花した様子を見ることはまずないであろう「ギョウジャニンニク」


美専学園で非常勤講師を務める孫田氏の展示解説は丁寧で明解


スキャナーグラフによる高精細でリアルな拡大画像は”生きた植物図鑑”と言えるだろう

個展会場は札幌市東区のギャラリーカフェ「茶廊法邑」

孫田氏の個展会場「茶廊法邑」は緑に囲まれた赤い三角屋根が特徴の落ち着いた佇まいの建物で、ギャラリーでアート作品を鑑賞しながら美味しいコーヒーやスイーツが楽しめるモダンなカフェだ。

なんと贅沢なことに今回は孫田敏氏と、カメラを使って抽象的なアートを追求している山岸靖司氏、それぞれの個展が同時に開催中(2026年7月2日まで)。二人の作家の表現手法や展示方法は全く対照的なのだが、両方の展示を続けて観ても全く違和感がなく、むしろ共鳴しているかのような印象を受ける。

二人の個展に合わせて店内の椅子やテーブルのレイアウトも通常とは異なっている。作品をゆっくり鑑賞しながら飲食できるよう工夫され、二人の作品から発せられるそこはかとない静けさが、なんとも居心地の良い空間を作り出しているのだ。

店内では両作家による立体アートも手頃な価格で販売されているのも嬉しい。この機会に是非ギャラリーカフェ「茶廊法邑」へ足を運んでいただきたい。


緑に囲まれた住宅街に佇むギャラリーカフェ「茶廊法邑」


シックな店内に調和する両者の作品群


「茶廊法邑」では山岸靖司氏の個展「天と地と人と」も同時開催中

まとめ

孫田敏 個展「植物細事記 vol.3.5」に足を運ばれたら、是非とも孫田氏にお声をかけてみてほしい。きっと少年のような笑顔で「身近な植物の意外な世界へ」あなたをエスコートしてくれるだろう。そう、彼は「アートの森の冒険者」神秘的な植物の深淵や繊細なスキャナーグラフの研鑽について親切丁寧に(そしてロマンティックに)語ってくれるだろう。

カフェギャラリー「茶廊法邑」で同時に開催中の二人の展示、孫田敏 個展「植物細事記 vol.3.5」と山岸靖司 個展「天と地と人と 〜 その瞬間 全ては完璧に調和する」は7月2日(木)まで。お見逃しなく!


アートの森の冒険者・孫田敏氏


ギャラリーカフェ 茶廊法邑

住所
北海道札幌市東区本町1条1丁目8-27
電話番号
011-785-3607
営業時間
10:00〜18:00
定休日
火曜

【同時開催中】「天と地と人と〜この瞬間 全ては完璧に調和する」の作家・山岸靖司氏へのインタビュー記事はこちら

この記事を書いたモウラー

モウラー

AkiraTanisugi

函館在住のフォトグラファーです。土方歳三の肖像写真を撮影した写真師・田本研造をルーツにもつ百年写真館を営みながら、北海道の歴史やアイヌ文化をテーマにカメラとともに旅をしています。かつて婦人生活雑誌の大手出版社で社カメをしていた経験を活かしたくモウラーになりました。音楽はハードロックが大好きです。取材のご依頼などございましたらお気軽にご連絡ください。よろしくお願いします。