【地酒】 低精白米酒が今ブーム? いよいよ旭川の蔵も
※この記事は2022年9月のasatanサイトで掲載したものです。
旭川の蔵で造られた「低精白米酒」2本を味わってみました。近年、日本酒愛好家の人気を呼び、ブームとさえ言われているこの酒はいかなるものか。また精白(精米)という酒造りの豆知識をなるべく専門用語を使わずに簡単に解説します。
低精白米酒とは
精白とは原料である米を精米すること(米を削ること)。ざっくり言うと、たくさん削ると高精白、少ししか削っていないものを低精白。低精白の米で作った酒が「低精白酒」だ。
なぜ米を削るの?
通常、酒造りでは、まず米を精米する。もみ殻だけを取り除くのではなく、米粒の外側まで削ります。
なぜなら、米粒の外側には、酒造りに不向きな成分が多く、このせいで酒に雑味が生じるから。
たくさん削り取ると雑味のない淡麗でフルーティーな酒質に、あまり削らないとそれなりに、というのが概ね酒造りの常識とされているんですね。
よく耳にする「吟醸酒」。ラベルを見ると精米歩合60%とか書いてある。ほう、米の6割も削ったのか。いやいや、違うんだな。歩合ってのがクセもので、これは米を4割削って6割残しましたよという意味。メーカーは日本酒を身近にとか言ってる割に、ホント、めんどーですね(この表示は監督官庁のお達しだから仕方ない)。
すごいのになると精米歩合40%とか。はい、説明したから分かりますよね。米の6割を削りましたよ、ですね。ちなみに歩合が50%以下(5割以上削る)になると「大吟醸」と呼ばれる。
6割削った?米、残ってんの?というレベルだが、マーケットでは削れば削るほと酒は旨い!みたいな風潮が。
昭和後期にあった日本酒の級別制度(特級とか2級とか)が廃止され、代わりに特定名称(吟醸酒、純米酒、本醸造酒など)になると、いわゆる大吟醸ブームみたいな状況も。
まあ、吟醸も旨いものは確かに旨いっすけどね。これは否定しない。
酒蔵の新たな挑戦
ところが、近年、真逆のシーンが注目されている。精米歩合80%とか、米をなるべく削らずに多くの部分を原料に使う酒を「低精白米酒」と呼ぶのだが、これがちょっとしたブームなのだ。
米を削らない(無駄にしない)ので地球に優しい、といったイメージがウケているという側面もあるが、これまで雑味になるからと削られていた部分も、これはこれで旨いじゃないかという評価が高まってきた訳だ。
あるいは、筆者が思うに、これは、削らなくたって、うちなら旨い酒を作れるよという蔵人のメッセージだ。酒蔵それぞれが持ち前の技量を生かし、吟醸イコール旨いという摩訶不思議な「常識」からの脱却が始まった。
旭川の低精白酒を味わう
この夏、ほぼ時を同じくして男山、高砂酒造が低精白酒を発売した。
ネーミングも斬新。どちらもラベルからして興味を惹くね。
【男山】 精米歩合80%の普通酒
見ての通り、そういう名前の酒なのだ(笑)
これまでの常識を疑い、いろいろやってみようと、男山で今年立ち上がったプロジェクト「やってみるべ部」の開発品。
北海道産酒造好適米を100%使用。
精米歩合が「65%」より大きいものは使用したことのない同社、「扁平(へんぺい)精米(雑味となるタンパク質を効率よく除去する精米)」という技術を新規に採用し、精米歩合「80%」に挑戦。
精米歩合「65%」と同等の、雑味の少ないすっきりとしたやや辛口タイプのお酒に仕上がったとのこと。=SNSによる同社談=
アルコール分15度、価格は720ml・880円と安い。いわゆるコスパが良いと価格はこうなる。
まずは冷やして頂いてみると、おおっ、思いのほか良い香り。
思いのほかだなんて筆者も普通酒はイマイチという先入観ありました。ごめんなさい。
ごくほんのりとした果実香に誘われて味わってみれば、滑らかな口当たりから広がるバランスの良い酸味と甘味。確かに雑味もなく、しっかりと旨味が伝わってくる。うん、しっかり日本酒してるじゃないか。
こういう酒には穏やかな味わいのアテがおすすめ。
ってことで、出汁巻き(やや甘め、ネギ入り)とともに酒を味わってみれば、ああ良いねぇ、卵の風味が酒の旨味を引き立ててくれる。板わさなんかも良さそうだ。
時間が経ち、酒が室温に馴染んでくると(ちょっと温度が上がってきた)、口当たりは飲み始めより格段に柔らかく、じゅわっと酸味が口の中に広がる。こりゃ常温でもイケそう。個人的にちょいぬるの方が好みかな。
販売先
道内種類販売店
および同社直売(男山酒造り資料館)
- 住所
- 旭川市永山2条7丁目
- 電話番号
- 0166-47-7080
- 営業時間
- 9:00~17:00
酒蔵開放(2月第2日曜日)は10:00〜15:00 - 定休日
- 年末年始(12/31、1/1〜3)
【高砂酒造】 低精白純米酒 高砂86(ハチロク)
北海道産米のもつ米本来の味わいを存分に味わってほしいという想いから、あえて低精米で醸造いたしました。
あまり馴染みがない精米歩合86%、まずは1度お試ししてみてくださいとのこと。=SNSによる同社談=
アルコール分14度、価格は720ml・990円(税込)と男山同様こちらもお値打ち。
こちらも冷やして頂いた。
まずはひと口味わってみれば酸味が華やか。この点、実に高砂酒造らしい感じがする。また、旨味も確かに感じることができる。
アルコール分14度ということで、いわゆる軽い感じはするものの、飲み応えはいつも嗜んでいる純米酒と比べても、何ら遜色は感じない。
きりっとした飲み口、キレも良く・・・、うん、すっと切れるが何か物足りない? いや、これはもう一杯注げという酒のメッセージだ。
とかくこの手の酒は食事との相性の良さを予感させるよね。
ということで、テイスティングのアテに醤油おにぎり(ちなみに中は梅と甘い福神漬け。我ながら美味しい)を用意してみれば、期待通り、おにぎりの旨味に引けを取らない酒質に感心。
また、口の中のおにぎりの余韻をハチロクがさっとクリアに。おかげで、もう一つとおにぎりに手が伸びる。
これ、食中酒の必須条件なり。筆者的には十分な満足度を確信したのでありました。
酒を出しっぱなしにして、あえてちょっと温度の上がったのも試してみたら、概ね口当たりはなめらかに、旨味は絶えることはない。でも、少し冷えてる方が味わいが鮮烈で良い。あくまで個人の好みですけど。
販売先
道内酒類販売店
および同社直売(高砂酒造明治酒蔵)
- 住所
- 旭川市宮下通17丁目
- 電話番号
- 0166-22-7480
- 営業時間
- 9:00~17:30
- 定休日
- 年末年始