
提供:北海道
アイヌ文化体験ツアー・札幌お散歩コースに参加!ゲームや踊りでアイヌ語や文化を学習しました
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北海道主催で、小学生とその保護者がアイヌ文化について、見て、触れて、知る「おやこでナルホド!アイヌ文化体験ツアー」が10月から11月にかけ、開かれました。旭川や白老などのアイヌ民族ゆかりの施設を見学する5つのコースが用意され、そのうち11月1日に実施された、札幌市中心部の北海道庁赤れんが庁舎と北大植物園を巡る「札幌お散歩コース」の様子を紹介します。
アイヌ文化のガイド事業などを手がける株式会社「NEPKI」(平取町二風谷)のアイヌ文化ガイド、山田桜子さんと川合蘭さん、アイヌ語講師のなっつさんがガイドを務めました。
アイヌ語由来の北海道の地名を探そう!
最初に、アイヌ語で「こんにちは」を意味する「イランカラㇷ゚テ」を教わり、参加者みんなであいさつして、ツアーがスタート。平取町二風谷にルーツを持つなっつさんが「日本語にも大阪弁や京都弁など方言があるのと同じく、アイヌ語も地域によって違うことがあります。イランカラㇷ゚テは、改まった時のあいさつで、二風谷では親しい人に会った時に『ヘー』と言うこともあります」と紹介しました。
続いて、赤れんが庁舎の中の展示室「アイヌ文化と歴史」を全員で見学。この部屋の床には、横約10メートル、縦約7.5メートルに渡って、松浦武四郎が作った北海道の地図「東西蝦夷山川地理取調図」が描かれています。山田さんは「カタカナで書かれているのは、アイヌ語の地名。本州から来た人たちが、その後、その音に近い漢字を当てはめて、今の地名になっているところがたくさんあります」と説明しました。
「赤れんが庁舎ミニクイズ」に挑戦
参加者はその後、赤れんが庁舎内の展示内容をテーマにした出題がされる「赤れんが庁舎ミニクイズ」に挑戦。「北方領土展示室」で北方領土のイメージキャラクター「エリカちゃん」のモデルとなった動物が何かを考えたり(答えは「エトピリカ」)、「樺太関係資料室」で樺太周辺の「海馬島」と「海豹島」のロシア語名を調べたり(答えはモネロン島とチュレニー島)と、クイズの答えを探しました。
「アイヌ語ラジオ体操」で準備運動
予定では、赤れんが庁舎周辺や北大植物園を散策したり、屋外でミニゲームやアイヌ古式舞踊の体験をする予定でしたが、この日はあいにくの荒天だったため、赤れんが庁舎地下の道民活動支援室「道民ベース」に場所を移し、一部内容が変更されました。
道民ベースでは、まず「アイヌ語ラジオ体操」に挑戦です。1~4の数字を示すアイヌ語を覚え、そのかけ声に合わせて体操します。1は「シネㇷ゚」、2は「トゥㇷ゚」、3は「レㇷ゚」、4は「イネㇷ゚」。子どもたちは、小さな「ㇷ゚」の発音方法やアクセントの付け方などを何度か口に出して練習してから、体操しました。
北大植物園の北方民族資料室を見学
準備運動が終わったら、雨が降ってはいますが、北大植物園に移動します。北大植物園は日本で2番目に古い植物園で、13.3ヘクタールの園内には北海道の自生植物が見られるだけでなく、先住民族の生活や文化、北海道の開拓に関する資料を集めた展示施設もあります。
北大植物園の北方民族資料館を見学
入り口から入ってすぐの管理棟2階は、北方民族資料室となっており、アイヌ民族のほか、樺太の先住民族のニヴフやウイルタの生活用品なども収蔵されています。資料室の中央には、アイヌ民族の家屋にある囲炉裏が再現されています。ガイドの川合さんは「アイヌ語で火は『アペ』といいます。調理をするにも、煙で食料の保存性を高めるのにも、防寒にも虫除けにも使われ、生活になくてはならないもの。火は大事な神さまで、『アペフチカムイ』といいます」と教えてくれました。「フチ」は「おばあさん」の意味だそうです。
アイヌ民族の服も展示されており、川合さんは「木の皮をはいで柔らかくして割き、糸をつくって織った布や、サケの皮、動物や鳥の皮などを利用したほか、交易で木綿も入手して、使っていました」と紹介。祭事でお酒(トノト)のしずくを振りかける献酒箸「イクパスイ」や神さまへの供物「イナウ」もいろいろな種類のものが展示されており、「どの神さまに何を伝えるかで、削り方や形が変わってきます」などと説明しました。
北海道最古の博物館で動物の標本を見よう
管理棟から歩いて数分のところに、博物館があります。1882年(明治15年)に建てられ、国の重要文化財にも指定されている北海道で最古の博物館です。今も利用されており、ヒグマやエゾオオカミ、鳥類、昆虫などの標本が展示されています。
川合さんは動物たちの標本を前に、「神さまの世界ではカムイは人の形をしていますが、アイヌの世界には、動物の姿になっておりてくると考えられています。だから、アイヌと関わりの深い動物たちは『カムイ』という名前が付いています」と説明。中でもヒグマは「キムンカムイ(山の神)」と呼ばれ、「人間に肉や皮、内臓をくれるほか、サケを捕って食べた残りをキツネやタヌキなどほかの動物に与えて自然を循環させてくれる大事な神さまです」と話してくれました。
今は絶滅したエゾオオカミの剥製も展示されています。エゾオオカミの剥製が現存するのはここだけです。アイヌにとってオオカミは狩りの上手な尊敬すべき存在で、長く共存してきましたが、本州から開拓に来て豚や馬を飼育していた人たちにとっては悪者で、駆除され、絶滅してしまいました。
ウサギやリス、タヌキ、オオワシ、シマフクロウなどアイヌ民族とも関わりの深い動物たちの剥製が並んでおり、川合さんは「アイヌにとって、動物たちは生活を助けてくれる大切な神さまです」と話しました。
お昼ごはんはアイヌ料理のお弁当
北大植物園の貴重な資料を見て、アイヌ民族について学んだ後は、赤れんが庁舎に戻って、お昼ご飯です。特別にアイヌ料理のお弁当が出されました。アイヌ語に「いただきます」というあいさつの言葉はないそうですが、最近は「食事しましょう」という意味の「イペアンロー」を「いただきます」の代わりに使うそうです。みんなそろって、「イペンアロー」と言って、はしをとりました。
ご飯は細かく刻まれたハマナス(マウ)入り。全体が薄くオレンジ色に色付いています。昔はコメを交易で手に入れていたそうです。
おかずはジャガイモとギョウジャニンニク(キトピロ)、カボチャとキハダの実(シケㇾペ)のラタㇱケㇷ゚(混ぜ煮、和え物)が2種、鶏肉のシケㇾペ煮、山菜の和え物、イナキビの団子に加え、アイヌ民族にとって欠かせないサケ(チェㇷ゚)を焼いたものも入っていました。シケㇾペの柑橘のような香りと苦みや渋み、キトピロの強い匂いも調味料代わり。子どもたちは、山や海の恵みを存分に活かし、いつもとはちょっと違う味付けのアイヌ料理を味わっていました。
「アイヌ語色おに」で遊ぼう
お昼ご飯の後は、体を動かして遊びます。「アイヌ語色おに」です。なっつさんが色を示すアイヌ語について、「アイヌの人たちは、色を4種類に分けています」と説明してくれました。木の実が熟した時の赤は「フレ」、空が明るくなった時の白は「レタㇻ」、夜になって何も見えない時の黒は「クンネ」、それ以外の黄色や青、緑などは「シウニン」です。
おにが、この4つの色のうち1つを選んで言うと、おに以外の人はその色を見つけて触らなくてはなりません。見つけられずに触っていない人におにがタッチをすると、おに交代です。「レタㇻ」「フレ」などとおにが叫ぶたびに、みんなは部屋の中の白や赤を探して走り回っていました。
モユㇰ(タヌキ)やキムンカムイ(クマ)のものまね、できるかな?
もうひとつのミニゲームは、「だるまさんが転んだ」。普通は、「だるまさんが転んだ」と言っておにが振り向くと、静止しなくてはなりませんが、今回は、おにが「だるまさんが○○」とアイヌ語の動物の名前を言うと、その動物のものまねをしなくてはなりません。
子どもたちは「モユㇰ(タヌキ)」「キムンカムイ(クマ)」「チャペ(ネコ)」など、7種類の動物の名前を教えてもらい、発音も練習。おにが「エチンケ(カメ)」と言ったのに、ピョンピョンと跳ねる「イセポ(ウサギ)」のまねをしたりと、間違いもありましたが、体を動かしながら、少しずつアイヌ語を覚えていきました。
バッタキウポポ(バッタの踊り)でじゃんけんゲーム
次は、じゃんけんゲームです。十勝で昔、バッタが大量発生したことを伝えるためにつくられた「バッタキウポポ(バッタの踊り)」を踊りながら、歌が止まった時に近くにいる人とじゃんけん。次に歌が始まると、負けた人は勝った人の後ろについて踊ります。回を重ねるごとに列はどんどん長くなり、最後は1列になって踊りました。
バッタキウポポは中腰になって、ひざを曲げ、バッタのように手でパタパタとお尻の辺りをたたきながら踊ります。足を蹴り上げるようにピョンピョンと跳ねながら踊るので、みんな息を切らしながら、列がどんどん長くなっていくのをおもしろがっていました。
チロンヌㇷ゚カムイ(キツネ)の踊りにもチャレンジ
「チロンヌㇷ゚カムイ(キツネ)」の踊りにも挑戦しました。子どもがキツネ、お父さん、お母さんが猟師の役になり、「ほらほら、捕まえてごらん」とキツネが尻尾を振って挑発します。猟師は獲物を探す仕草をしながら歩き回り、キツネを見つけると矢を放ち、キツネが倒れると皮に見立てた上着を脱がせて手の平を上に向けて3回上下させる感謝の仕草をします。
最後はみんなで、輪になって踊ろう!
最後は、輪踊りです。なっつさんは「カムイの世界には、歌も踊りも色もないので、アイヌが楽しそうに踊っているのを、『いいなあ』と思って見て、見た目を動物の姿に変えてアイヌの世界におりてきてくれます。だから、みんなで楽しそうに踊ることが大事です」と呼びかけました。みんなは部屋いっぱいの大きな輪になって、なっつさんと川合さんのウポポ(歌)に合わせて体を動かしました。3人のガイドの動きを見よう見まねで、足を踏みならしたり手をたたいたりていると、子どもたちも自然と大きな笑顔に。楽しそうなみんなの様子を見て、カムイが動物の姿になって、来てくれたらいいですね。道内には他にもアイヌ関連施設がありますので、ぜひ足を運んでみてください。

