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#国指定重要文化財 「旧日本郵船株式会社小樽支店」の修理状況を見てきました!

#国指定重要文化財 「旧日本郵船株式会社小樽支店」の修理状況を見てきました!

小樽の国指定の重要文化財(建造物)は2022年12月現在で3つあります。

旧日本郵船株式会社小樽支店
旧手宮鉄道施設
旧三井銀行小樽支店

そのうちの旧手宮鉄道施設は小樽市総合博物館 本館で夏期の間、
旧三井銀行小樽支店は年中見学することができます。
そして、旧日本郵船株式会社小樽支店は
2018年から保存修理工事のために公開を休止しています。

先日2022年10月15日に修理工事の現場見学会が行われ
午前と午後の2回の開催で、各回約30人の定員に対して、130人ほどの応募があったようです。
運良く行くことができたのでご紹介します!


旧日本郵船株式会社小樽支店って?


1906(明治39)年に建てられた、石造り2階建ての日本郵船株式会社小樽支店の2代目の社屋です。
設計者は、工部大学校造家学科(東京大学工学部建築学科の前身)第一期生の佐立七次郎。
近世ヨーロッパ復興様式の石造2階建建築で、当時の最新設備の蒸気暖房やアメリカ製スチールシャッター、シャンデリアや金唐革紙の壁紙など贅をつくした建築物でした。

新築後まもなく、日露戦争の講和条約による樺太の国境画定会議(測量・表示・作図方法の打ち合わせ)が小樽で開かれ、二階の会議室が使用されたことでも知られています。


明治36年 手宮大火で1代目社屋全焼
明治39年 二代目社屋が完成
昭和29年 日本郵船株式会社小樽支店が札幌に移転
昭和30年 建物が小樽市に譲渡される
昭和31年 小樽市博物館として利用
昭和44年 国指定の重要文化財になる
昭和59年~62年 保存修理工事
令和2年7月~令和6年6月まで(予定) 保存修理工事 2回目

金唐革紙


旧日本郵船に使われている金唐革紙。

江戸時代に、
欧州で作られた、革を文様を彫った版木棒にあてて、凹凸の模様をつけて彩色や彩色をしたものを「金唐革」
金唐革をヒントに、日本で和紙に金箔や銀箔などを貼り革に似せて作られたものに、文様を彫った版木棒にあてて、凹凸の模様をつけて彩色や彩色をしたものを「金唐革紙」といいます。

最初は小物を中心に作っていましたが、明治初期から大蔵省印刷局で壁紙を製造し、輸出していたそうです。


上の画像は貴賓室の壁紙。
壁紙の色が違いますが、これは前回の(昭和59年~62年)修理の時に、金唐革紙の技術が途絶えていたので技術を復活させて(!)作られたため。
今、金唐革紙を製作するすべての技術を持っているのは、前回の復元に携わった「後藤仁」さんただ一人だそうです。

修理状況

今回の大規模修理では、
1.本館の耐震補強
2.外壁の修理内部漆喰壁の補修
3.屋根葺替え、小屋組の修理、
4.建具の塗装・調整、壁紙の修理

他にも北側の石塀についても耐震補強、石材補修を予定しているようです。

経年劣化だけでなく、軒先の劣化により、そこから雨水や雪解け水などが石材などに浸透し、
漆喰や壁、壁紙が劣化・破損してしまったようです。
内部の状況としては小樽が公開施設として利用していたため
雨漏りさえなければとても状態が良かったようです。

現在は、1と2は終了。3も大体終わっていて、4の修理を行っていく段階で見学をすることができました。

1階の状況(営業室、支店長室)


写真:小樽市教育委員会所蔵
1階は営業関係の実用的な部屋を配置していて、第一応接室、支店長室、金庫室、営業室があります。
上記の画像は、以前見学ができた時の営業室の様子。(画像は小樽市のサイトより)


そして、現在。
修理に妨げになりそうなものは、一時的に撤去されていました。
(これから先に掲載する写真は照明がない屋内で撮影しております。見づらいのはご容赦を。)


雨漏りによる劣化がすごいですね。カビちゃってます。
ちなみに防火シャッター(窓のところ)は未だに現役です。



天井紙は以前の修理の際にオリジナルの壁紙からおこしたデザインを印刷して貼っていたそう。
オリジナルの壁紙は金唐革紙(後述)を使用していましたが、進駐軍に摂取された際に「華美なものは駄目」だと白いペンキで塗られてしまったようです
前回の大規模修理の際は、このペンキをはがそうとしたようですが断念し、印刷した壁紙を上から貼ったようです。



店長室の天井紙の剥離が大きいですね。こちらの方が元の壁紙がわかりやすいです。

2階の状況(会議室)

階段を上って2階へ。



国境画定会議にも使われたという会議室。
なんともなさそうに見えますが…


貴賓室近くの壁は、雨漏りが内部にしみ込んだことにより、壁紙が剥がれてきてしまっています。


天井にヒビが入っています。(右は画像調整してみました)
二階は屋根に近いことからダメージが大きいようです。

2階の状況(貴賓室)


写真:小樽市教育委員会所蔵
贅を尽くした部屋なのに、一番傷みが激しい貴賓室。




壁紙がボロボロ。かろうじて残っている部分も傷みが激しいので交換することになるそうです。


天井は薄いブルーでしたが、シミやヒビが入ってしまっています。

2階の状況(食堂)




途中の廊下含めて、2階はひび割れや穴、シミがひどいです。

2階に限らず、全体的に言えることなのですが、修理することはできたとしても基本的に文化財は「本物としての価値を損なわないために現状維持修復を原則」としているので、
どうやってできる限り残すのか、検討しているものが多いようでした。

さいごに

全ての修理が終わるのは2024年6月の予定ですが、元の美しい姿に戻るのが楽しみですね。
現状維持はどのようにされるのかも気になります。

修理の様子は小樽市のサイトでも見られるほか、
状況にもよりますが、来年も修理工事の現場見学会を検討しているそうです。
興味を持たれた方、来年参加してみてはいかがでしょうか?
小樽市のサイトをチェックしてくださいね。

もっともうらー!(参考資料)

今回の記事を書くにあたって参考にしました。

小樽市のサイト(修理状況が見られます)
〔報文〕旧日本郵船小樽支店の建築部材の劣化と保
存対策
 
・重要文化財 旧日本郵船小樽支店保存修理工事報告書(前回の修理時のもの。小樽図書館で読むことができます)
文化資源の保存


この記事を書いたモウラー

モウラー

小樽アオバト情報局

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例えるなら、TVやラジオの専門チャンネルのように、小樽の情報を一人でひたすら流し続けています。
ラジオ出演やタウン誌で執筆もしています。詳しくはサイトをご覧ください。
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