
「クマに出会わないために」北海道登山の危険回避マニュアル
北海道の大自然には、クマ(ヒグマ)が生息しています。ニュースでクマの出没情報を耳にする方も多いのではないでしょうか。クマとの遭遇は、時に怪我や命の危険に及ぶ事態になることも。
そこで大切なのが、クマに対する対策の知識です。予防策をしっかり取れば、登山中にクマに遭遇するリスクを大きく下げられるでしょう。
この記事では、登山前の準備から登山中の注意点、一番遭遇したくない場面での実際の対処法まで解説します。
登山をする方や北海道の自然を満喫したい方は、ぜひ参考にしてくださいね。
北海道の山にいるクマ(ヒグマ)はどんな生き物?
北海道にのみ生息するヒグマってどんな動物?ツキノワグマとの違い
日本国内では北海道にのみ棲むクマ、ヒグマは体重80kg~200kg体長1.5m~2.3mほど。非常に大きいヒグマは体重300kgを超えることも。ヒグマは四足歩行ながら二本脚で立ち上がるので、大きさから鬼気迫るものがあります。
本州に生息するツキノワグマ(体重60kg~130kg、体長120~150㎝)よりも格段に大きいのが特徴です。
本来は臆病な性格ですが、恐怖心や防衛本能から人間を襲ってくることも少なくありません。ヒグマは自分から人間の近くに来る機会はそれほど多くありませんが、人間が残した食べ物を見つけて人々の生活圏によってくることがあります。
北海道でクマに遭遇しやすいエリア&時期
大体のクマは山林部に生息しています。特に以下のような場所では遭遇するリスクが高まります。
- ・山菜や果実が生えている場所
- ・川や沼、湖など水源の近く
- ・過去に出没情報がある場所
- ・人が歩かない未開の道
4月頃から美味しい食べ物を探して活動を始めるため、冬眠以外の春・夏・秋には特に注意が必要です。
登山前にできるクマ対策!遭遇リスクを下げる方法
登る前に必ずチェック!クマ出没情報の調べ方
登山の前に、必ずクマの出没情報を確認しましょう。以下の方法で最新情報を入手できます。
- ・地域の自治体や森林管理局の公式サイトで情報を確認する
- ・登山口やビジターセンターで最新の注意喚起情報を得る
- ・SNSや登山アプリを活用し、登山者の最新の投稿をチェックする
最新の情報を基に、クマの出没が多い場所は避けた方が無難です。
【熊の目撃について】
— 北海道警察地域情報発信室 (@HP_tiiki) October 28, 2024
令和6年10月28日午後0時36分頃、札幌市南区定山渓温泉東1丁目で、熊の目撃通報がありました。
警察官等が現場付近を警戒していますが、同所付近を通行する際は十分に注意してください。
また、熊を目撃した場合には110番通報をお願いします。#ヒグマ
SNSの情報はリアルタイムで更新されているので確認しやすいですね!
「クマ鈴」だけじゃダメ?登山中の効果的な音対策
クマ鈴は、登山者がよく使うクマ避けアイテムで、リュックやベルトに身に付けて使います。歩くたびに鈴の音が鳴りクマを寄せつけない効果があるといわれています。アウトドアショップで購入できますよ。
簡単に取り入れられる対策のクマ鈴ですが、それだけでは不十分な場合も。鈴の音に慣れるクマもいるため、クマ鈴だけでは人間の存在を認識しない可能性があります。
効果的な音対策には、以下の方法も有効です。
- ・定期的に大きな声を出す
- ・手を思いきり叩く
- ・ストックを岩に打ち付けて音を出す
- ・ホイッスルやラジオを活用する
「クマにこちらの存在をしっかり知らせる」ことが大切です。音を活用して、クマが寄ってこないよう対策しましょう。
持っておくべきクマ対策グッズ3選
クマ対策を徹底するときにおすすめのグッズは以下のとおりです。
- ・クマ撃退スプレー(万が一の際に必要。素早く取り出せる場所に装備する)
- ・大音量のホイッスル(クマに気づかせるために有効)
- ・防水性のある食料袋(食べ物の匂いを遮断し、クマを引き寄せないため)
これらのグッズを準備し、正しく使いましょう。
対策グッズは、アウトドアショップやネット通販で手に入ります。購入後は、登山に行く前に使い方を予習しておくと安心できますね。
登山中にクマに出会わないための行動マナー
静かに歩くのはNG!登山中の「クマ避け行動」
クマは人の気配に気づかず突然接近すると、パニックを起こすことも。本来臆病な生き物なので、驚くと人を襲ってしまう危険が高まります。そのため、登山中は静かに歩くのは逆効果です。
- 登山中に意識すべき行動
- ・定期的に大きな声を出す(特にカーブや茂みがある場所)
- ・単独行動は避ける(複数人のほうがクマは警戒する)
- ・風向きに注意する(クマにこちらの匂いを察知させる)
「今、人間がここにいるよ」とクマに知らせることを意識して歩くのがおすすめです。黙々と歩きたくなる気持ちはわかりますが、クマ対策には適さないでしょう。
これを見つけたらすぐ引き返せ!クマの痕跡チェック
登山道で以下のようなクマの痕跡を見つけたら、すぐに引き返してください。
- 新しい足跡(特に大きなものは要注意)
- 糞(ベリーや骨が混ざっていることが多い)
- 木の引っ掻き傷(マーキングしていることがある)
- 動物の死骸(クマの食料になっている可能性)
これらを発見した場合、すぐ近くにクマがいる可能性が高いです。その場から静かに引き返し速やかに安全な場所へ移動しましょう。
もしクマに遭遇したら?絶対にやってはいけない行動
「逃げる=アウト!」クマと遭遇したときの基本対応
クマと鉢合わせしてしまったとき、絶対にやってはいけないのが「走って逃げる」ことです。逃げるものを追う習性があるため、ほぼ追いかけられてしまうでしょう。クマは時速50km以上の速さで走れるため、追いかけられたら逃げ切るのは不可能です。
- クマに遭遇したときの適切な対応
- ・ゆっくり後退し、クマから距離を取る
- ・クマと目を合わせず、刺激しないようにする
- ・荷物を投げて注意をそらさない
あわてて逃げるとクマは追ってきます。攻撃される危険があるのでゆっくり後ろに下がりましょう。物を遠くに投げて興味をそらすのは逆効果です。人間に興味を持ったり、驚いて攻撃してきたりする可能性があります。
クマを刺激しないよう、落ち着いて対応してください。
「死んだふり」は効果がある?
よく聞くクマへの対応「死んだふり」は、基本的に効果がありません。特にヒグマの場合、興味を持たれると攻撃される可能性が高いため伏せるのは危険です。
代わりに、ゆっくり後退しながら、クマに「敵意がない」ことを伝える行動が重要です。死んだふりは実践しないようご注意くださいね。
クマ撃退スプレーを使うタイミング
クマ撃退スプレーは、クマが至近距離(約3〜5m)まで接近した場合に使用するのが最適です。
- クマ撃退スプレーを使うポイント
- ・風向きを確認し、逆風では使わない
- ・目を狙ってスプレーを噴射する
- ・確実にクマがひるんだら、速やかにその場を離れる
クマ撃退スプレーの主な成分は、唐辛子に多く含まれるカプサイシンです。クマにかけると嫌がるため、至近距離のときのみ使いましょう。
万が一、クマ撃退スプレーが人間にかかると目の痛みや息苦しさといった不調が生じることも。自分にかからないよう注意して使う必要があります。
北海道の登山でクマ対策を徹底しよう
クマ対策のためのマナー
自然を守りつつ、クマ対策をするための必須マナーはこちらです。
- ・ゴミを持ち帰る
- ・食べ物の管理を徹底する
- ・単独行動を避ける
最低限のマナーとして、ゴミはしっかり持ち帰りましょう。ゴミについた食べ物や匂いで、クマは食料があると思い人間に近付いてしまうことも。持ち歩く食べ物も、匂いが出ない袋に密封して持ち歩くとより安全です。
クマは怖がりなので、複数人の方が警戒してくれます。登山をするときは、クマが棲んでいるテリトリーにお邪魔する気持ちで行くといいですね。
クマを見かけたらどこに通報する?
クマを見かけたら、できるだけ速やかに通報してください。
- クマの情報を伝えるべきところ
- ・警察
- ・森林管理局
- ・自治体
- ・登山口の掲示板に最新情報を記入
【《緊急》ヒグマ出没情報】(豊平区羊ヶ丘)
— 札幌市広報部 (@Sapporo_PRD) September 14, 2022
先ほど、豊平区羊ヶ丘の札幌ドーム敷地内にヒグマがいるとの通報が寄せられました。
詳細が分かり次第、追ってお知らせしますが、大変危険ですので周辺の方は不要な外出を控えていただくなど注意願います。ヒグマを目撃したら110番通報願います。
他の人のためにも、クマを見かけたら情報を提供しましょう。まずは、自治体や警察、森林管理局に連絡をするとスムーズに対応してくれます。
また、他の登山者に知らせるためにも。登山口に記録するものがあればお知らせしてください。クマの数やいた場所、時間などをなるべく細かく記載すると、他の人が参考にしやすいですよ。
クマ対策をして北海道登山を安全に楽しもう
北海道はヒグマが多く生息しています。登山や自然を満喫するアウトドアでは、クマ対策が必須でしょう。
クマの生態や対策法を知って事前準備を万全にしてから登山をすると安心です。ルールを守り、北海道の美しい自然を安心して楽しんでくださいね。