【vol.12】トラベルリスナー
サイレントリスナー
わ!この連載1年経った。この文字を打ち始めた瞬間に「vol.12」という数字に気づいた。
週に1度学校訪問をしている私が月に1度連載している「非効率の向こう側」。今この瞬間読んでくれているあなたありがとう。たまに読んでます!と言ってくれる人がいるけれど基本的にはサイレント読者が多い。
ラジオではメッセージやSNSでの参加をせずにただ聞いている人のことをサイレントリスナーと呼ぶ。おそらく9割がこの分類になる。一方でラジオを始めてから手紙を貰うことが増えた。これは嬉しい誤算。
スマートフォン1台で世界が完結する令和の時代に手紙を買って、ペンを持ち、ただ私のことだけを考えながら文字を書き、切手を貼り、ポストに投函する。メールを送る、SNSに投稿するとは比べ物にならない「想いの時間」が生まれている。本当にありがたい。
先日貰った手紙は高校生の女の子からでした。手紙を読むと小学生の頃から私の「ファン」だそうだ。「リスナーです」と言われることはあっても「ファンです」と言われることはなかなかない。照れた。
両親が共働きだった彼女は朝に1人でご飯を食べることが多かったそうで、たまたま家にあったラジオに手が伸びた。聞いてみると「北海道の市町村を紹介する番組」にはまったそう。その声の主が私だった。番組と言っても3分、私が調べてきた市町村ネタを喋るだけ。週に1度その原稿を書いていたのは約8年前のこと。
まさかその番組をきっかけに私の「ファン」になり、今でも担当番組を熱心に聞いてくれている子がいるなんて驚いた。その子は高校生になり、放送局に入り「森本さんをお昼の校内ラジオに呼ぶ」という目的を見事果たした。「高校生活で1番の思い出」と言ってくれた彼女の表情は、私の人生の中でも大切な思い出になりました。
今日もどこかで誰かが聞いている。そう思いながらラジオをしているが、実感がわくことは少ない...なんてことはない。私はほぼ毎週実感している。8年前に寂しい思いを抱えた小学生と知らない間にラジオを通して出会っていた。もし学校訪問をしていなかったら、この子の存在を知ることはなかったのかもしれない。
トラベルリスナー
2023年9月18日(月祝)FM北海道の開局記念特番、通称「秋食べ」が放送された。この番組は普段札幌で喋っているパーソナリティが旭川や帯広、函館や北見に出向き、各地を中継しながらゴール地点に向かうというもの。今年、私の行先は函館でした。
無事に番組も終わり、ゴール地点に来てくれた多くのリスナーさんと写真を撮ったり、話をした。その中で「はじめまして!」と声をかけてくれた学生3人組もまた、サイレントリスナーだった。
函館西高校放送局1年生の3人だった。私は学校名を聞いた時に驚いた。実は1年前に学校訪問の取材で行った学校だったからだ。しかし、彼らは1年生で当時は入学していない。話を聞くと、3人のうちの2人が1年前先輩が出ていた放送を聞いて「この学校に行ってこの先輩と活動したい」と思ったそう。進路と部活をラジオで決めたんです。そして、もう1人は2人に誘われてきた同じ部活の友達。「部室にポスター貼ってるので森本さんのことは知ってます!」と笑顔で話してくれた。
これまでも「イマリアルを聴いて学校決めました!」という学生には会ってきた。ただ、出会った場所が「函館だった」ことは私にとって非常に大きな意味を持った。今日もどこかで誰かが聞いている。それを信じられた。3人にインタビューしたものをラジオで流した。もしかしたら、今の中学生が当時の彼らと同じ感情を抱いたかもしれない。
参加せず、ただ聞いている人のことをサイレントリスナーと呼んでいたが、私は今日からトラベルリスナーと呼びたい。未来で会おう。未来で話そう。この記事を読んでいるトラベル読者も未来で会いましょう!…やっぱりダサいか。