【vol.7】清楚系女子は4月にばれる
マスク越しの夢語り
あなたは進路探求セミナーをご存知だろうか?
知らなくてもきっと内容はわかるはず。そう、進路を探求するセミナーです。
札幌市立高校1年生向けのプログラムで、第1部は社会人を迎えた講演、第2部は新入生が書いた「夢」に関する作文を元にディスカッションをします。私は5年続けて第2部のコーディネーターとして参加しています。総勢2000名の高校1年生が参加する行事の1つです。
今年度、第1部の講演を行ったのはパラリンピック パワーリフティングの選手で、北海道庁職員の戸田雄也さん。20代で突如車椅子生活となった戸田さんは「身体の変化」「仕事の変化」「新型コロナウイルスによるパラリンピックの延期」など多くの挫折を経験。その度に「自分に期待」し、「挑戦」するという生き方は高校生だけでなく私にとっても貴重な話でした。
戸田さんも交えて行ったのが各校の代表生徒、総勢7名による作文発表とディスカッション。大前提として夢があるというのは奇跡。目標がない私なんて・・・と思う必要はない。会場となった市立札幌平岸高校に集まった総勢7名の学校代表生徒。新型コロナウイルスが存在する前は1つの会場に集まって行っていたが、昨年から各学校で配信を見る形式で行っている。とはいえ画面の向こうには2000人がいる。周りにいるのは全員が他校の生徒。どことなく緊張感が溢れる教室で発表会は始まった。
「舞台女優になりたい」
「家業を継ぐ」
「誰かの役に立ちたい」
「漫画家になりたい」
など、様々な夢が語られました。
それぞれの目標を聞いて、各学校の生徒が感想や質問をする。リモート先の学校にも画面越しに呼びかけてコミュニケーションをとった。約1時間のディスカッションは時間が足らずに終了。コーディネーターの私は「もっとこうしたかった」という思いはありましたが、生徒にとっては有意義な時間だったようです。終わってから話を聞くと「他校の生徒と交流することが無いから楽しかった」「自分の夢を誰かに語ったことがなかったから言葉にすることの大切さを知った」という感想が集まった。
私自身、言葉にすることの強さを、脆さを知っている。
漫画「ONEPIECE」の主人公モンキー・D・ルフィは「海賊王に俺はなる」と宣言した。「僕のヒーローアカデミア」の緑谷出久は「僕はヒーローになる」と唱え続けた。かくいう私も、学生時代から「ラジオパーソナリティになる」と言い続けた。周囲に思いを伝えることで、その先に行動をしないといけなくなる。同時に守ってくれる仲間も増える。失敗したっていい。その過程が大事。この日、彼らの目標は2000人に共有された。その事実が7人の人生を変えるはず。あなたも宣言しませんか?
非効率が生んだ再会
嬉しい再会もあった。
夢を語った生徒の1人は今年3月、中学校卒業直前に学校訪問取材(IMAREAL)で出会っていた子でした。イベント終わりに「私〇〇中学校出身です!森本さんが応援しに来てくれました!」と声をかけてくれた。実はこの子が所属していた部活の部長(Aさん)は私の番組でユニークな目標宣言をしていた。
例えば、部活で優勝したい、受験に合格したい、こういう仕事に就きたいなど、これまで数えきれない目標を聞いてきた。そんな中、Aさんの目標は「高校に入学したら清楚系女子として生活する」というものだった。
学校内に部員約50名の笑い声が響いた。本人も笑っていた。あれから約1か月、Aさんの友達であるその子からその後の話を聞いた。「清楚系女子になるって言ってたAさん、すぐに清楚系じゃないってばれたらしいですよ(笑)。」私の笑い声が教室に響いた。その場に居ないのに人を笑顔にする。Aさん、あなたはあなたのままが良い。
そしてもう1人。
生徒の付き添いで来ていた23歳の先生が声をかけてくれた。「森本さん!僕、今年から教員になったんですけど、高3の時にイマリアル出ました!」なんということでしょう…話を聞くと確かに先生が学生だった頃にインタビューしていた。当時、その彼が宣言した目標が「先生」だったかどうかは覚えていなかった。それでも「ラジオに出たこと」、「自分の声が誰かに届いたこと」は先生にとっても力になっていたと話してくれた。
今回出会った高校1年生も未来でまた出会うかもしれない。たかがラジオ、たかが10分のインタビュー。そのために週に1度学校に行っています。非効率と言われたこの企画は、未来で不意に花が咲く。非効率の向こう側には何かが待っている。だからやめられない。やめる気などない。