【vol.21】思い出はいつも雨
今月の「非効率の向こう側」は僕と、雨と、酪農学園大学の学校祭のお話を。
肉ゼミのベーコン
14歳の夏、僕は「雨男」と呼ばれるようになった。
夏祭りに寝坊した。そんなやつがいるだろうか。ここにいた。誰もが楽しみにしている夏祭り、しかも夕方から始まるにも関わらず昼寝をしていた私は、携帯のアラームで目が覚めた。
「森本!神輿始まるぞ!どこいんの!?」
私が中学校時代を過ごした、愛媛県松山市では子供たちが神輿を担ぐのが恒例行事だった。慌てて準備して祭り会場に着いた途端土砂降りになった。当日の降水確率は10%、天気予報は晴れだった。
15歳の夏、僕は転校先の学校でも「雨男」と呼ばれることになった。
夏祭りに寝坊した。なぜ私は夏祭りだけ寝坊するのだろうか。引っ越した先の、四国中央市と呼ばれる四国の中央にはない市でも夏祭りに神輿を担ぐ習慣があった。1年前と全く同じように友人から電話で目覚めた。当日の降水確率は0%、天気は晴れ。1年前がフラッシュバックしたが流石に0%だ。1年前とは違う。そう思いながら会場に行った。着いた途端土砂降りになった。
33歳の夏、僕は酪農学園大学の学校祭に向かっていた。(ちなみに北海道では学校祭と呼ばれることが多いが私が育った地域では文化祭が主流です。)降水確率は50%、天気予報は曇りのち雨。終わった。確実に終わった。そう思いながら学校に向かった。到着したら目当てのひとつ「肉ゼミによるベーコンを買う」ために校内を歩いた。
酪農学園大学は広い。敷地内に牛舎や畑、動物病院などもありそれぞれの学類で学んでいる生徒が実習を行っている。トラクター体験や生物展示、トマトすくいなど、酪農学園大学らしい催しも多い。遂に見つけた「ベーコン」。リアル「銀の匙」だ。300gで1500円。なかなかのお値段ですが、そこには学生の「経験税」と「想い税」が含まれているから安いもんだ。
親子連れから、先生、在校生も列に並んでいた。SNSでは予約販売が終了しているくらいの人気商品だった。なんとか購入できて当日の夜、シンプルに焼いて食べた。味付けなし。抜群に美味しかった。来年はあなたも是非。今のところ雨は降っていない。
狩り部の鹿肉
酪農学園大学とは2024年1月から私の担当番組「IMAREAL」でコーナーを展開している。中高生や保護者に向けて酪農学園大学でどんなことを学べるのか、受験期にどんなことを乗り越えてきたのか、在校生のリアルな声を発信しています。
そのコーナーでも話題になったのが「狩り部の鹿肉」です。酪農学園大学名物、朝から大行列で無くなり次第終了。1番の目的はこれだった。雨が降ってきた。
鹿肉を求めれる列に並んで20分が経った頃、傘に当たる雨粒の音の強さが増した。5分後、列に並んでいる人が待つのを諦めるほど土砂降りになった。酪農学園大学のみんな、ごめん。俺のせいだ。俺が来たせいで大切な思い出が雨になってしまった。
待つこと30分、雨の中食べた鹿肉は臭みがなく、肉の旨味にスパイスが合わさった絶妙な味わいだった。これは行列になるはずだ。このあとの学生インタビューでも食べた感想を伝えよう!
「さあ!今日は酪農学園大学にいます!」と始まったラジオ収録。学校祭実行委員会の学生の子にインタビュー。学校で学んでいることだけでなく、当日の様子なども伝えてもらった。最後に私が「ごめん!僕のせいで今日雨になったっぽい!」と言うと彼が一言こういった。「あ、大丈夫っすよ。学校祭毎年雨なんで!」
僕は少しだけ濡れてから帰った。