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【vol.32】カツオのリアコ
FM北海道アナウンサー/パーソナリティの森本優が週に1度の学校訪問を通して感じたことや出会った学生のことを紹介。開始当初は「非効率」と言われた学校訪問企画から生まれた出会いにあなたも触れてください。

【vol.32】カツオのリアコ

気まぐれプリンセス

今月も読んでくれているあなた、初めて読んでくれているあなた、ありがとうございます。ラジオパーソナリティの森本優です。「非効率の向こう側」というタイトルのこの連載はラジオ番組「IMAREAL」を通して出会った学生や、体験した出来事を記しています。今回は「リアコ」について。

リアコ=「リアルに恋している」の略
主にアイドルや二次元キャラクターなど、現実には恋愛関係になることが難しい対象に対して、本気で恋をしている状態を指す言葉。

あなたはリアコですか?それともリアコになった経験はありますか?私はありません。特に学生時代は、アイドルやキャラクターに対して、エンターテイメントというフィルターを通さず、自分の世界に生きている人と認識する方が不思議でした。今となってはラジオ業界に身を置き、右足の小指くらい芸能界に触れているので、日常的にアーティストやタレントの方に会うことは増えた。それでもリアコにはなることはない。

北海道に来て11年が経ち、当初から「アイドル好き」というキャラクターで知ってくださっている人も多いでしょう。そもそもの私のアイドル遍歴をお伝えしようではないか。

小学生の頃、クラス全員がモーニング娘。の音楽を聞いていた。今でこそ「推し」という言葉はあるが、当時は無かった。私の世代では、圧倒的に辻ちゃん&加護ちゃんが大人気で、ミニモニ。の「じゃんけんピョン!」なんて運動会でも踊った記憶がある。初めて音楽が「流行」したのを感じた時期だった。そんな中でも私は特に好きなメンバーがいるわけでもなく、現象としてモーニング娘。が流行っていて、自分も曲は好きだから聞くし、テレビにもよく出ているから知っているくらいの感覚だった。

事件が起きたのは高校生の頃、それも受験期にたまたまテレビに映っていたモーニング娘。の中で視線を奪われた方がいた。それが6期生の亀井絵里さん。彼女はバラエティではボケ倒す天真爛漫なキャラクターだったが、いざステージに立つと一変する。とにかくカッコよかった。そのギャップに魅了され、気づけば人生初の「推し」が出来た。再生回数の1000回は私じゃないかと思う「気まぐれプリンセス」をぜひご覧ください。特に2番!(いや〜メイクもファッションも時代を感じますね〜)

2010年4月、高知県の高校から東京にある大学に進学した私は、いつか絶対モーニング娘。のコンサートに行くんだ!と心に決めていた。同年8月、亀井絵里さんの卒業が発表された。最後のコンサートは12月に横浜で行われる。なぜか私は応募ページを閉じた。人生初の推しに会うのをやめた。当時の心境ははっきりと覚えていない。今となっては何で行かなかったんだ自分!と言いたくもなるが、一度も目の前で見たことがない自分にとっては「伝説の人」になってくれた。

推しの喪失から数年、久しぶりにできた推しは、またもやモーニング娘。10期メンバーの石田亜佑美さん。彼女はとにかくダンスが上手かった。私は「このダンスを生で見たい」と思い、推しに会うことを決めた。小柄な身体がステージに立つと何倍にも大きく見えた。気づけば青のサイリウム(石田さんのメンバーカラー)を振り、握手会などにも参加した。

そこからAKB48の渡辺麻友さん、℃-uteの鈴木愛理さん、Juice=Juiceの宮崎由加さん、少女時代のユナさんなど、学生時代はとにかくアイドル文化に触れて過ごした。ちなみに、先述の石田さんは推し始めた13年後の2024年冬、卒業前に私の担当番組に出演してくださり、私の涙を見て涙を流してくれた。「あなたを推せて幸せでした」と自然と言葉にしていた。

そして、私に「リアコ」が現れた。

森本優のリアコ


「私!森本さんのリアコです!」と彼女は突然現れた。
後にも先にも「森本優のリアコ」と名乗ったのは1人だけだ。数年前、毎週、いや毎日のように番組へのメッセージやSNSで私への愛を溢れさせてくれていた。私の写真をアイコンにしたり、スマホのロック画面や待ち受けにしてくれていた。すごく不思議な気持ちだった。

ラジオパーソナリティをしている以上、応援してくれている人はいるが、リスナーとファンは違う。またファンの中でも応援の仕方は人それぞれだ。この記事を読んでくれていることも応援の形です。そんな中で、人生でこれまで自分への愛を語る人に出会ったことがなかった私は、少し戸惑いもあった。そうか、アイドルは日常的にこうした愛をたくさん受けとっているんだ。ある意味、大変なことだ。1人でもこんなに想いを感じるのに、それが数百、数千、数万となると、本当にアイドルという職業は凄いなと感じざるを得ない。ちなみに森本優のリアコは1か月程、愛を語った後にいなくなった。現実世界で楽しく生きてくれていたら嬉しい。

それぞれのリアコ


学生パーソナリティのジュナジュナ(写真右)と!

2025年6月6日、事件は起きた。この日は札幌国際情報高校の放送局のジュナジュナちゃん(ラジオネーム)と一緒にスタジオから生放送をした。留学した話、家族の料理の話、部活や学校生活の話など、終始楽しいトークだった。その中でジュナジュナ家では「毎週日曜はサザエさんを見ながら餃子を食べる」という話になった。なんて微笑ましい時間だろう。餃子ではない日もあるそうだが、ほとんど日曜日は餃子らしい。そんな彼女に私は「サザエさんで推しキャラはいます・・・(か?)」という質問をしている間に食い気味で彼女はこういった!

「私!カツオのリアコなんです!」

・・・え!?なんて!?カツオのリアコ!?!?
スタジオ内も放送を聞いているリスナーにも衝撃が走った。人生で初めて「カツオのリアコ」に出会った。彼女は興奮気味に続けてこう言った

「花沢さんが羨ましい!中島君に嫉妬してます!」

彼女は本気だ。私は中島君に嫉妬したことはないし、これからもないと思う。彼女は深呼吸したのち「カツオのまっすぐなところが大好きなんです」と目を輝かせて話した。留学している半年間で1番会いたかったのは磯野カツオ君だったそうです。

果たしてリアコは非効率なのか。もはやそういう概念ではないのか。彼、彼女らを推している時間こそが人生。ラジオも推し活時代に突入している。いつだって恋心は自由だ。あなたのラブのリアルを大切に。結果的に自分自身のリアコになれますように。


この記事を書いたモウラー

ゲストモウラー

森本 優

ラジオパーソナリティ/プロデューサー
1991年6月3日生まれ / 高知県出身
毎週(金)18:00~22:00 FM北海道「IMAREAL」担当。
2021(令和3)年度日本民間放送連盟賞ラジオ生ワイド部門で最優秀賞受賞。
音楽を聴きライブに参加しバスケを見るのが好き。