【vol.1】学生と作る"ラジオの芸術祭"
IMAREALって何!?
『イマリエール!』という言葉に親近感を抱く方、いつもありがとうございます。
そしてMoulaで出会ってくれたあなた、はじめまして。
FM北海道というラジオ局でアナウンサー/パーソナリティをしている森本優と申します。
この度、月一連載という形でコラムを書くことになりました。
美味しいものや施設の情報がたくさんある中で、私が書く内容は「ラジオと学生」についてです。
私がパーソナリティをしている番組「IMAREAL」は2017年4月にスタート。放送開始以来、週に1度の学校訪問を通して、学生の"イマのリアル"をラジオから届けてきました。
コロナ禍で数か月訪問できない時期はありましたが、基本的に週に1回以上は学校に足を運んでいます。約5年半で13,000人あまりの学生と出会ってきました。
学校訪問を始めた当初は「非効率」なんて言われましたが、続けていると様々な出会いや発見が多くあります。
今回からの連載「非効率の向こう側」では、私が出会ってきた学生のリアルな姿、ラジオを通して感じたことを綴っていきます。
初回となる今回は2022年10月21日(金)に放送した『IMAREAL~学生芸術祭2022~』をご紹介します。
”読むラジオ”をどうぞお楽しみください。
IMAREAL~学生芸術祭2022~
新型コロナウイルスの猛威は学生の"発表の場"をたくさん奪いました。
学校訪問を通して、学生から聞こえてきたのは
「誰にも見てもらえず部活を引退した」
「何のためにやっているか分からずに部活を辞めてしまった」
といった言葉です。
保護者の方からは「子供の部活をしている姿を見られなくて残念」というメッセージが番組宛てに届くこともありました。そんな中でラジオができる役割ってなんだろう?そう考えた時に浮かんだのが「学生芸術祭」でした。
声と音だけで表現できる部活動の発表の場をラジオで作る。そうすれば友達や保護者の方はもちろん、全国各地にいるリスナーに学生の作品を届けることができる。構想を練り始めたのは2021年のクリスマス時期だったのを覚えています。
それから約半年、2022年度が始まった春から夏にかけて、つながりのあった学校だけでなく、ラジオから届けたいと思った学校/部活動に声をかけて学校に取材で訪問しました。何度も生徒や先生とやりとりをし、2022年10月21日(金)芸術祭当日を迎えました。
ちなみに冒頭にあるビジュアルは、この日限定の番組ロゴとして、専門学校の札幌デザイナー学院の学内コンペを経て選ばれた飯田ひかりさんが作ってくれたものです。
札幌市立手稲東中学校太鼓部
番組冒頭に登場してくれたのは札幌市立手稲東中学校太鼓部。
北海道内でも珍しい太鼓部のある中学校です。
生徒のみんなに挨拶をし、朗らかな時間が過ぎていましたが、演奏収録になると空気は一変。真剣な表情で太鼓部伝統の「天地」を披露。代表生徒は「僕たちなんかでいいんだろうか」と不安げな表情をしていたのが嘘かのような凛とした表情で演奏してくれました。
ラジオで伝えるのが悔しいくらい、現場は太鼓に乗った声と想いが強く響いていました。
演奏を聞いたリスナーからは「ラジオでこんなに凄いんだから、なおさら目の前で観たかった!」という声が多く届きました。
北海道札幌月寒高等学校マンドリン部
「もっちょりさんですか?」
…と数年前に地下鉄の駅で声をかけられた学校帰りの2人の女子高校生は番組リスナーでした。
「いつか私が入っているマンドリン部にも来てください!」という言葉を聞いて、初めて「マンドリン」という楽器の存在を知った。イタリア発祥の撥弦楽器で、見た目はギターそっくり。音色の幅が広く、聞いた瞬間に魅了されました。
声をかけてくれたリスナーの子は現在大学生。この子がつないでくれた縁を絶やしてはならない。
何よりもマンドリンの音を聞いてもらいたい!と思い、札幌月寒高等学校マンドリン部に出演をお願いしました。
聞けば先生が今年度で定年退職されるそうで、生徒の皆さんとの思い出作りの一環としてもラジオから素敵な音色を届けられて良かった。
演奏してくれたのは「交響曲第9番『新世界より』第4楽章」。
余談ですが、オンエア中にクラシックを愛する私の先輩がスタジオに飛んできて「素晴らしい演奏だった!」というほどでした。
北海道網走南ケ丘高等学校放送局
今回「僕も出たい!」と手を挙げてくれたのは北海道網走南ケ丘高等学校放送局に所属するリスナー。
アナウンス部門として、リモートで一緒にニュース読みを練習して収録を行いました。
放送では「学校ニュース」を全国のリスナーに届け、
「素敵な声!」
「上手!」
「もっちょりよりうまいんじゃない!?笑」
など多くの反応があった。
放送局同士のつながりもあり、「友達が出てて凄い!」などのリアクションもありました。
「普段は先生の指導しかないので、もっちょりに教えて貰えて嬉しかった。網走って遠くて学校訪問来てもらうの無理かな?って思っていたけど、こういう形でも参加できて嬉しい」と話してくれました。
いつか必ず会いに行くよ。
札幌北斗高等学校演劇部
こちらの学校、札幌北斗高等学校演劇部も"先輩が繋いでくれた縁"です。
部員を代表して3名の生徒さんが、FM北海道のスタジオに来てラジオドラマを収録しました。
脚本は顧問の先生で「雨」をテーマにした約10分の青春群像劇をオンエア。
リアルタイムでのツイートやメール、放送後のメールでも多くの反響がありました。
その反響の多くに「演技力」と「想像力」が挙げられていました。
ラジオだから見えない。
だからこそ難しい「言葉の表現」を、演劇部のみんなが一生懸命届けてくれました。
普段は舞台に立つ彼女たちが初めてラジオで届けることを経験し「本当に難しかったけど楽しかった!」と笑顔で話してくれたのが印象的でした。
学校法人希望学園 札幌第一高等学校合唱部
訪問するのは2度目の札幌第一高校合唱部。
実は最初に取材した時に合唱の力を身体で感じ、その場で「今度、ラジオでみんなの合唱を届けられないかな?」と直談判しました。
生徒の皆さんは大きくリアクションし、喜んでくれ「普段なかなか聞いてもらう機会がないので嬉しいです!」と本番まで時間のない中でしっかり準備してくれました。
演奏したのは乃木坂46の「サヨナラの意味」という曲。
合唱曲としてテンポが速く言葉数も多い、非常に難易度の高い楽曲ですが、しっかり歌いこなし、放送中も放送後も多くのリスナーが合唱部分を聴き直していると教えてくれました。
声の力は凄い!
市立札幌新川高等学校吹奏楽部
「IMAREAL」が始まった2017年から訪問し続けている学校/部活です。
何代にも渡って取材してきましたが、札幌新川高校吹奏楽部は「真摯」という言葉がぴったりで、インタビューも演奏もしっかり向き合ってくれます。
でも、休憩している時は学生らしく一緒に写真を撮ったり、何気ない話をしたり、顧問じゃないのに顧問の気持ちになる瞬間が多かったです。
演奏してくれたのはYOASOBI「三原色」。
「元々知っていた曲だけど演奏する側になって難しさや楽しさが分かりました」と部長は話してくれました。
放送中には同じ吹奏楽部の学生や吹奏楽部OB/OGの方から「楽器に触りたくなった」とリアクションが届きました。
北海道函館西高等学校放送局
最後に登場したの北海道函館西高等学校放送局。
今回番組の中で届けたのはラジオドラマ「私のいろ、みんなの彩。」という作品でした。
この作品は第69回NHK杯全国高校放送コンテスト北海道大会「創作ラジオドラマ部門」で最優秀賞に輝いたもの。
「IMAREAL」という番組のコンセプトの1つに「認め合う」ということがあります。
「あなたはあなたで良い」ということを伝え続けている中で、この作品のタイトルを見た時に「『IMAREAL』から届けたい!」と思いオファーしました。
脚本・出演・編集など制作全般を担当した2年生の平井萌々華さんは「自分が好きじゃないんです。だから私のような人に少しでも寄り添える作品にできたら」とIMAREAL用にブラッシュアップしたものを放送しました。
芸術祭の最後にふさわしい番組とリンクする作品が多くのリスナーの心に触れました。
後夜祭にて
構想約半年、取材期間約2か月、放送時間4時間。
やっぱり非効率かもしれない。
だけど、この4時間の放送の中で出会った学生、届いた言葉と音には大きな価値がある。
「今度は私の学校に来てください」
「僕も発表したいです」
という声や、社会人リスナーや教職員の方、他局の方からも「素晴らしい放送だった」という言葉をいただきました。
改めてラジオって良いな、学生たちのパワーは凄いな、そう感じる生放送でした。
来年も実施することをここに記しておきます。
そしていつかラジオの放送だけでなく、リアルな場も設けイベントとしてもやりたい。
声に出す、言葉に出すことで実現に繋がる。そう信じています。
これからも"非効率の向こう側"にある感情に出会いに行きます。